「建売住宅にすべきか、注文住宅にすべきか、家族にとって、どっちがいいんだろう」
「建売・注文住宅を比較するために、価格差や品質の違い、ラーニングコストや寿命の違いなどを知りたい」
そんな疑問にお答えします。
最近の戸建ては、建売や注文住宅、どちらもかなり進化してきました。
ひと昔前は「建売は安いけど、品質は良くない」なんて言われていましたが、今はどうなんでしょう?
どっちにすべきか迷っている方のために、「今」の建売・注文住宅の違いを解説していきます。
- 建売・注文住宅の価格差やラーニングコストの差
- 建売・注文住宅の寿命や保証、品質などの違い
- 「今」の建売・注文住宅のメリット・デメリットを選抜
- 建売・注文住宅の間の家、「規格住宅」について
では1つずつ解説していきます。
目次
1.建売・注文住宅の価格差はどれくらい?
建売・注文住宅の価格差について、建物費用や諸費用も交えて解説していきます。
1-1.建売・注文住宅の正確な価格差は算出できない
いきなり、期待を裏切るような結論ですが、残念ながら建売・注文住宅の正確な価格差は算出できません。
これは、本サイトだけに限らず、誰にも算出できないんです。
他のサイトでは、統計データを引っ張り出して、600万円とか、多いところで1,000万円違う、と解説しているところもありますが、統計データはそもそも「同じ条件で比較していない」ので、その価格差は実は参考になりません。
例えば、フラット35の「住宅金融支援機構」が2018年度の所要資金(全国)の平均額を公表しています。
- 建売住宅:3,442万円
- 注文住宅:3,395万円
建売は「土地を含んだ金額」、注文は「土地を含まない金額」になっています。
建売と注文住宅の価格差を比較する場合、どうしても両方の土地価格(平均)が分からないと正確な金額は出すことはできないと思います。
つまり、多くの建売住宅メーカーが「建物、土地の価格の内訳」を公表しない限り、正確な価格差は算出はできない、という結論になってしまうわけです。
さらに、諸費用の問題もあります。
建売の場合、諸費用の一部は建物価格に含まれてしまいますが、注文住宅の場合は全て別に支払うことになります。
注文住宅の方は諸費用を自分で支払うので、とても高いイメージになると思いますが、建売の諸費用分はしっかりと建物価格に含まれているので、決して得になっているわけではありません。
ですので、建売や注文住宅の価格差を比較するのは、さらに複雑になってしまうわけです。
fa-arrow-circle-right注文住宅の諸経費が知りたい方は下記ページをご参照下さい。
ただ、この結論では全く参考にならないと思いますので、正確ではありませんが、建売・注文住宅の価格差の「予想値」を解説してみます。
1-2.同じ条件で比べた場合の価格差(予想)
前置きとして、これから解説する価格差の予想は、あくまでも私の個人的感覚値であることをご了承ください。
その感覚値は、公表はできませんが、ハウスメーカーでの勤務経験から「1棟当たりの利益額・仕入れコスト・人件費・諸費用・工事費」などをしっかりと把握しているので、かなり正確ではないかと思います。
まず、建売と注文住宅を比較する上の前提として「建物に使用する建材・設備」「土地の立地・広さ・形」は同条件とします。
続いて、注文住宅と比較して、建売住宅が価格を下げられるポイントは次の5つです。
- 建材や設備を大量に注文することで仕入れコストが下がる
- 広大な土地を安く買い叩き、分譲して販売をするので、土地の仕入れコストを下げられる
- 打ち合わせに必要な人件費(営業マン、設計士、コーディネーター、監督)が不要
- 住宅展示場への出展費用や、配置する営業マンが不要
- 施工ミスや施主とのトラブルが注文住宅より少ないため、補填損失が低い
このポイントを踏まえた上で、建売・注文住宅の価格差を予想すると、次の金額になると思います。
つまり、「間取りやコーディネートの自由」に対して300~400万円を支払うのか、支払わずに「土地の立地の良さ」を取るのか、という違いになるのではないでしょうか。
2.メンテナンス費用などの維持費の差はある?
以前は注文住宅のメリットとして、「建売と比較して維持費が安く、長持ちする」と言われていました。
建売住宅は建材・設備の質が落ちるので、劣化が早いからです。
しかし、現在は、建材・設備ともに全体的に長持ちするものが普及してきているので、注文住宅ほどではないにせよ、建売も以前に比べてメンテナンス費用の負担が下がってきていると言われています。
それに、ハウスメーカーや工務店のコスパ情報が参考にならない理由は?にも記載していますが、「大手ハウスメーカーを選べばメンテナンス費用が下がる」というのも、すでに都市伝説となっています。
確かに大手注文住宅メーカーでは、例えば「外壁材」や「屋根材」など、メンテナンスフリーをウリにしている建材があります。
しかし、大手ハウスメーカーでは建物そのものの性能や設備が高性能化しているため、その修理や点検などのメンテナンス費用も同様にアップしてしまいます。
これは建売と注文住宅と比較した場合でも同様のことが言えるわけです。
つまり、建売と注文住宅のメンテナンス費用の価格差はほとんどない、と考えてもらっていいのではないでしょうか。
fa-arrow-circle-right注文住宅のメンテナンス費用の解説は下記ページをご参照下さい。
3.建売住宅の寿命は注文住宅と比べて短い?
以前から、建売は注文住宅と比べて、寿命が短く、長持ちしないと言われてきました。
しかし、これは全くの都市伝説で、おそらく注文住宅関係者(営業マンなり)がそういうデマを流したんだと思います(おそらくですが)。
建売と注文住宅の寿命を比較した研究や根拠資料はどこにもありません。
それに、建て替えのサイクルを調査した研究や資料はたくさんはありますが、それは「寿命」というよりも、「生活スタイルの変化によって建て替えをした」という意味合いの方が強く、寿命を測る根拠にはならないわけです。
早稲田大学の研究で、こんな資料がありました。
■寿命推計結果の推移
調査年 調査対象 木造専用住宅の寿命 2005年 52都市 54.00年 1997年 48都市 41.16年 1990年 都道府県所在地 40.63年 1987年 48都市 38.67年
これは戸建て(木造)の寿命を調査した資料です。
建売も注文住宅もひっくるめて、2005年の段階で、「寿命は54年ある(平均)」、というデータになっています。
おそらく2020年の段階では60~70年を超えているはずですし、例えば長期優良住宅に適合している住宅ならば、100年以上長持ちするのもうなずける資料ですね。
fa-arrow-circle-right長期優良住宅については下記ページにまとめています。
つまり、何が言いたいかといいますと、今の住宅は建売だろうと注文住宅であろうと「比較することに意味がないくらい長持ちする」ということです。
建物の寿命を決める要素のほとんどが「湿気」です。
建売も注文住宅も湿気を住宅内に入れないような工夫がされています。
- 基礎の土台全体にコンクリートを敷きつめて、地面から上がってくる湿気を入れない。
- 断熱材やサッシの性能アップにより、気密性が高く、壁の中に湿気を入れない。
- 外壁材と中の板の間に隙間をあけて(通期工法)、湿気を逃がす。
他にも建築会社によっていろいろな手法があります。
それに、点検がしやすい構造になっていたり、建材自体が長持ちするようになってきています。
建売・注文住宅の寿命を比較するよりも、しっかりとメンテナンスすることに意識を向けていきましょう。
4.保証やアフターサービスに差はある?
続いて、建売・注文住宅の保証やアフターサービスについて差があるのか解説していきます。
当然、単価が高い注文住宅の方が保証やアフターサービスが充実している、と思われるかもしれませんが、これも一概にそうだと言えません。
保証とアフターサービスについて1つずつ解説していきます。
4-1.保証について
まず、注文住宅では構造躯体(くたい)に対して、例えば60年という超長期間の保証がついていることをウリにしているハウスメーカーもあります。
しかし、構造に対して保証が長いことが有利かと言われると、実際には「同じハウスメーカーで10年ごとにメンテナンスを受ける」ことが長期保証の条件となっていますので、ハウスメーカーに多額の費用を支払って保証を買っていることになるため、得だとは言い切れないと思います。
fa-arrow-circle-right注文住宅の保証に関して詳しくは下記ページをご参照下さい。
また、各建材や設備については、それぞれを作っているメーカーの保証期間に準じていますので、建売・注文住宅ともに比較のしようがありません。
ただ、注文住宅の方が、建材や設備を選べる分、例えばオプション料金を支払うことでグレードアップし、保証期間を長くすることができるのは確かです。
4-2.アフターサービスの比較
建売と注文住宅全体をアフターサービスの良し悪しを比較するのは難しいと思います。
注文住宅の中でも、アフターサービスがしっかりしているハウスメーカーもあれば、かなりいい加減なハウスメーカーもあるため、「建築会社によって異なる」という結論にならざるを得ません。
しかし、注文住宅の場合は、建売と異なり、営業マンとかなり濃厚な関係を築くことになるというメリットがあります。
営業マンとは何度も顔を合わせることになるので、施主の性格や好みも把握することになります。
これは工事監督も同様のことが言えます。
つまり、注文住宅の方が新築後に気軽に相談できたり、またキメ細かいアフターフォローをしてもらえる可能性があるため、建売と比較するとやや軍配が上がると言えるかもしれません。
5.建売住宅の品質は注文住宅と比較して悪いの?
一般的に、建売は注文住宅と比較して「品質が悪い」と言われることがありますが、実際にはどうなのかを解説していきます。
まず、「品質」と表現すると、かなり曖昧で、捉え方によってイメージが大きく変わってしまいます。
ですので、少し「品質」を定義します。
- 安全性
- 信頼性
- 仕上がり
本記事ではこの3つを「品質」と定義してみますので、住宅性能が高いとか、水回りなどの設備のグレードが高い、などの「品質」は削除しますね。
この3つを品質の定義とすると、もう少し分かりやすく噛み砕くと、次のようになります。
- きっちりと図面通りに施工されているか。
- 事前に告知されている通りの住宅性能になっているか。
- 建材・設備が事前に告知されている通りの機能を果たしており、不備がないか。
- 住宅性能・設備において短期間でいちじるしい機能の低下がないか。
- 内装の仕上り・デザインに不備がないか、また短期間でのいちじるしい劣化がないか。
「品質」をこのように考えていくと、建売・注文住宅という大きな枠で比較しても、どちらの品質が良い、と言えるようなことはありません。
実際、私は注文住宅のハウスメーカーで働いていたことがありましたが、同じハウスメーカー内であっても、地域によって品質はバラバラでした。
地域によって依頼する職人も異なりますし、工事部署の各監督のレベルや教育が異なるからです。
建売は同じ間取り・デザインの住宅をいくつも作りますので工事ミスが少ない傾向にありますが、注文住宅はそれぞれバラバラの間取り・デザインなので、工事ミスが多いということもあります。
確かに注文住宅の方がニーズに応えるために、住宅性能を上げるために建材や設備のグレードを高くしていますが、「品質」を比較すると建売も注文住宅も変わらない、というのが結論です。
各建築会社によって「品質」は大きく変わるため、契約前にしっかりと見極める必要があると思います。
fa-arrow-circle-right注文住宅の場合は、契約前に必ず工事現場を確認しましょう。
6.建売・注文住宅の「明確に異なる」メリット・デメリットだけを選抜
ここまで、建売・注文住宅を比較して解説してきましたが、実はメンテナンス費用・寿命・保証・品質は「そんなに変わらない」、「比較できない」、ということがお分かり頂けたと思います。
では一体、何が異なるのか、実際のメリット・デメリットはどうなのか、4つのポイントに絞って解説していきます。
6-1.金額
1-2章でも解説していますが、同条件・同性能の住宅と考えると、注文住宅よりも建売の方が300~400万円ほど安くなると考えられます。
これは当然建売の最大のメリットと言えます。
また、建売を購入したいというお客様のニーズは、土地の好立地を優先する傾向にありますので、建物はなるべくコンパクトに、無駄を省き、低コストで販売されています。
注文住宅は逆に、性能が高いことをウリにしていきますので、土地を含めたトータルのコストは大きく差がひらく傾向にあります。
近年では、ローコストの注文住宅や高性能の建売住宅も増加しつつあります。
6-2.自由度
「建物の間取り・デザイン・一部の設備・一部の建材・外構を自分好みにできる」というのが注文住宅の最大のメリットです。
ここに関しては説明が不要ですね。
その他、細かいことを言えば、コンセントや照明なども生活スタイルや好みに合わせて自由に変更できます。
また、注文住宅は将来のリフォームを計算に入れて間取りを作ることも可能です。
逆に建売の場合は、もちろん完成している建物を購入するわけですので、間取り、設備、カラー、外観などを自由にすることは出来ません。
ですので、建売の場合は間取りや外観・内装のどこかしらに不満が溜まりやすいと言えます。例えば、コンセントの数が少ない、家具と位置が合っていないなど、細かい部分でストレスになりやすいと言えます。
fa-arrow-circle-right注文住宅の間取りや外構で失敗しない為の解説は下記ページをご参照下さい。
6-3.工期
「入居までの期間が短く、手間がかからない」というのが建売住宅の大きなメリットの1つです。
建売は完成した建物を購入するので、契約後、1ヶ月以内に入居することも可能でしょう。
逆に注文住宅の場合は、契約から打ち合わせから工期までを考えると、5~8ヶ月ぐらいは掛かります(建築会社によります)。
また、間取りやコーディネート、電気など、すべての打ち合わせ回数は間違いなく10回以上になりますし、自宅で考えなくてはいけないことが多く、労力がかなり必要になります。
もちろん、注文住宅は覚えることも多いので、大きなデメリットと言えます。
fa-arrow-circle-right注文住宅の流れは下記ページにまとめています。
6-4.購入前に商品が見れるか、契約後に工事が見れるかの違い
「購入前に建物の間取りや外観・内装、仕上がりの状態を正確につかめる」というのが建売住宅のメリットの1つです。
建売の場合、購入前に建物をしっかりと確認することができます。ですので、購入後にイメージと違ったという後悔にはつながりにくいと言えます。
逆に注文住宅は少ない情報とイメージで建築会社と契約し、図面や3D画像で間取りや外観をイメージしなくてはいけません。
ですので、建売と比較すると失敗や後悔に繋がりやすいのは大きなデメリットと言えます。
ただ、5章でも少し工事について触れていますが、注文住宅は「進行中の工事を定期的にチェックができる」というのはメリットの1つです。
逆に建売は工事の状態や壁の中を確認することができないのがデメリットと言えます。
7.結局、建売・注文住宅、どっちが向いているの?
ここまで読み進めて頂くと、少しずつ、建売・注文住宅、どちらにすれば良いのかが見えてきたのではないでしょうか?
- 300~400万円高くても、自由な間取りやデザインの家にしたい!
- 高性能な住宅に住みたい!
そういう希望なら、当然、「注文住宅」を選ぶべきでしょう。
- 間取りやデザインはそんなにこだわらないから、なるべくコストを抑えたい!
- 建物よりも土地の立地を優先したい!
そういう希望なら、当然、「建売住宅」を選ぶべきでしょう。
ただ、そんなにはっきりと希望が固まっているなら、そもそも建売と注文住宅で迷っていませんよね。
前述した通り、今はローコストの注文住宅や、高性能な建売住宅も登場してきています。
どちらにすべきか、とすぐに判断せず、しばらくは建売も注文住宅も一緒に探すのが良いのではないでしょうか。
それに、次章で解説しますが、建売と注文住宅のメリットを活かした、中間に位置する住宅がありますので紹介します。
8.建売と注文住宅のメリットを取り入れたちょうど間の住宅とは?
建売と注文住宅で悩んでいる方にオススメの住宅です。
8-1.規格住宅
ご存知の方も多いかもしれません、規格住宅は「間取りや外観などはある程度決まっているプラン集から選択する住宅商品」のことです。
同じ建材・設備でたくさんの住宅を作るので、仕入れコストが安くなり注文住宅よりも価格が下がります。
また、注文を受けてからの建設になるため、外観・内装の変更、オプションの変更、一部間取りの変更ができ、建売と比較すると自由度があります。
とはいえ、注文住宅と比較すると自由度が下がる分、打ち合わせなどの負担も減り、かつ人件費分も価格が下がることになります。
もちろん、住宅性能はハウスメーカーと同レベルとなります。
また、現在、規格住宅の人気が高まり、いろいろなハウスメーカーで発売が続いています。
共働きの増加といった顧客動向に対応し、規格住宅の発売が続く。自由設計に比べ、顧客の手間や営業コストの削減が見込めるが、大和ハウス工業はウェブ限定、旭化成ホームズは買取保証付きといった付加価値を持たせた商品を展開する。
2019年12月のニュースですが、大手のハウスメーカーでも、いろいろな付加価値をつけて商品を展開しているようです。
建売・注文住宅、なかなか決められない方は、ぜひ一緒に検討してみてください。
9.まとめ
建売と注文住宅を比較すると、立地を優先するなら建売住宅、建物を優先するなら注文住宅と比較ができます。
ただ、建売住宅でも注文住宅メーカーでも日々、それぞれのデメリットを補うために色々なアイデア・商品を生み出しています。
最初から建売・注文という区分けをせずに、どちらも情報を集めながら、お家作りの考え方に共感できるメーカーを選ぶのが、もっとも損をしない方法ではないでしょうか。
最後までご愛読頂きまして有難うございました。