【新築の保証期間は長ければいい?】3種類の保証を完全解説

「いろいろな建築会社で【新築の保証期間】が長いことをアピールされるけど、やっぱり長い方がいいの?」

「そもそも、建築会社の【保証】って、具体的に何が保証されるの?」

家疑問くんそんな疑問にお答えします。

 

今回は新築の保証について詳しく解説していきます。

「弊社は保証期間が30年となっており、ご安心いただけます」

いろいろなハウスメーカーや工務店の営業マンが長い保証期間をウリにしていますが、具体的に【保証】を詳しく説明している営業マンは少ない。

実際、住宅の設備・フローリングの軋み・クロスの剥がれや膨らみなどは数年しか保証されません。

とても誤解が多い新築の保証。

保証は将来に関わる安全だけでなく、家計にも大きな影響が及ぶ部分ではありますので、ぜひしっかりとご理解いただければと思います。

本記事の内容はこちら。

本記事の内容
  • 住宅本体(構造部)の保証についての正しい認識
  • 住宅設備に関する保証期間の目安や注意点
  • 瑕疵担保(かしたんぽ)制度や施工会社が倒産した時の対処法

では解説していきます。

1.新築における保証を3つに整理

誤解されやすい「新築の保証」。

その原因は、保証には3つの意味が含まれているからです。

だから「ウチは保証期間が長いんです」とだけ曖昧に説明されると誤解が生まれてしまいます。

実際に私がお客様と商談させて頂いていると、新築の保証に関して間違った認識をしている方がとても多かったと記憶しています。

誤解が生まれないように保証内容を整理していきましょう。

1-1.3種類の「保証」をそれぞれ解説

「新築の保証」は次の3つの意味として使われます。

  • 構造部(基礎、柱、屋根など建物の主要部分)・雨漏り・防火性能に対しての保証
  • 住宅設備(給湯器、キッチンなどの付随設備)・建材(フローリング、建具、サッシ、クロスなど部材)に対しての保証
  • 住宅瑕疵担保(かしたんぽ)制度

その他、地盤調査の保証など細かいものはありますが、一般的に新築の「保証」は上記の3点に分類できます。

1つずつ簡単に解説します。

構造部・雨漏り・防火性能に対しての保証

ハウスメーカーが競い合う保証期間の長さは、この構造部に対しての保証を指しています。

もっとも頻繁に広く使われる保証。

基礎の土台、骨組み、雨漏り、防火性能など、特に「工事」に対しての保証になります。

※防火性能は、火災に対しての保証ではありません。

住宅設備・建材に対しての保証

建築会社は、専門メーカーに設備や建材を発注します。

取り付けが簡単なものは職人(大工)が設置しますが、難しいものは専門メーカーの技師が来て設置することになります。

建築会社はその設備や建材については一切の保証を追わず、各専門メーカーの保証期間や保証内容に準ずるわけです。

住宅瑕疵担保制度

「瑕疵担保(かしたんぽ)制度」というのはちょっと難しい言葉ですよね。

簡単に言えば、次のような意味になります。

上記で解説した「住宅の構造部」に欠陥があった場合(例えば家が傾いている、耐震性能に不具合がある、など)、建築会社は最初の10年間だけ無償で直しなさいという法律のこと

法律で定まっていますので、すべての建築会社では10年間の保証義務があるわけです。

この法律による保証義務と、建築会社独自の20年以上の保証が混同しやすいので注意しましょう。

 

ここから、上記3つの保証の詳細について、2~4章で解説していきます。

2.住宅本体(構造部)、雨漏り、防火性能の保証と期間

上棟式イメージ画像

まずは構造部の保証に関して、期間のことも含めて解説していきます。

保証の中ではもっとも重要で、かつ、もっとも誤解されやすい部分です。

2-1.保証の対象

では最初に、建築会社の保証の対象を把握しましょう。

ハウスメーカーや工務店にある20年~60年の長期保証の内容は上記の範囲のみとなり、例外はまずありません。

住宅設備や建材の保証期間は全く別になりますので注意して下さい。

例えば「新築7年後、地震やスコールなどの天災が無かったのに急に雨漏りがしてきた。ハウスメーカーに修理依頼したら、新築時の工事に不備があったことが判明した。」というケース。

この場合は雨漏りによる2次被害も含めて賠償してもらえます。

ただし、7年も経っていると建築会社が工事の不備だと認めないケースが考えられます。

疑わしい場合は他の調査期間に検査してもらい、裁判で戦わないといけない可能性もありますので注意しましょう。

建築会社選びでもっとも重要なポイントをまとめたページもあります。

保証期間が長いからといってどんなケースにおいても全て保証されるわけではありませんので、十分に理解しておきましょう。

2-2.建築会社によって保証期間が異なる理由

では、なぜ建築会社によって保証する期間が異なるのでしょう。

ハウスメーカーでは20年保証もあれば、長いところでは最大60年の保証もあります。

50年や60年という長い保証を付けるハウスメーカーの意図は何なんでしょう?

その理由は次の2つです。

  • ハウスメーカーの広告のため
  • メンテナンス費用を稼ぐため

1つずつ説明します。

ハウスメーカーの広告のため

一般的には60年という長期保証がついていれば、「安心」というイメージになりますよね。

それに「建物の構造や強度に自信があるんだ」という想像にもつながります。

つまり、長期保証をウリにすることで「安心」というイメージを訴求するための広告と言えます。

中でも特に「鉄骨」や「RC構造」を扱っているハウスメーカーが長期保証をウリにしています。

イメージ戦略としてはぴったりですからね。

ですが、実際、木造であろうが鉄骨であろうが、今の住宅は60年以上しっかりと長持ちするものばかり。

そもそも住宅の強度は骨組みだけでは決まるものではなく、骨組みの量・工法・建材の質などによって決まるものです。

木造と鉄骨の違いは下記にまとめています。

保証期間が長いから、「安心」とか「強固な家」とイメージするのは絶対にやめましょう。

メンテナンス費用を稼ぐため

どんな長期保証をウリにしているハウスメーカーでも、必ず次のような条件があります。

10年ごとに、施工会社にメンテナンスをしてもらった場合に限り、10年の延長保証がつく

つまり、10年ごとにメンテナンスをしない、または他のリフォーム会社にメンテナンスを任せると、保証は切られてしまうわけです。

この条件はどんなメーカーも例外はありません。

建築会社が保証を長くする最大の理由は「メンテナンスを独占して新築後も利益を確保していくため」ということ。

あまり望ましくは無いですが、かなり悪い言い方をさせて頂くと、「安心」を餌に利益を搾り取る、とも言えます。

現に、自社でリフォーム子会社・部門がある大手ハウスメーカーでしか長期保証はやっていません。

やっていないハウスメーカーも、業績が上がってリフォーム部門が大きくなれば、必ず長期保証に転換するはずです。

 補足
保証期間の長い建築会社を否定するつもりはありません。他の会社にメンテナンスを依頼しても保証が切られるだけですので、施主には選択肢があります。
保証期間が長い建築会社が利益至上主義で悪意に満ちているわけでは決して無いでしょう。
ただ、住宅業界全体の課題として、建築後の保証の在り方を見直していく必要があると思います。

2-3.高額なメンテナンス費用を払って「安心」を買う!?

上記で解説した10年の延長保証の時に発生するメンテナンス費用についてもう少し深堀します。

新築して10年経つとハウスメーカーから無償点検があります。

その際、メンテナンスの見積りが発行されます。

その見積りの通りにメンテナンスすれば、10年間、構造部の保証を延長する、というのが一般的な延長保証です。

その時の見積り金額はもちろん建築会社や住宅の大きさや状態によって大きく異なりますが、おおよそ120~250万円の間になると思います。

上記解説したとおり、無償点検、見積り、補修は基本的に建築会社のリフォーム子会社・部門が請け負っているケースがほとんど。

私が当時驚いた情報ですが、新聞記事リフォームランキングで2位以降10位まですべて大手住宅メーカーが占めていたことがありました(2016年度売上ランキング)

それも大手住宅メーカーのリフォーム会社のテレビCMはもちろん見たことがありませんし、インターネットやチラシなどなど、営業している姿を見たことがありません。

大手住宅メーカーのリフォームのほとんどは自社のお客様だけを対象としているにもかかわらず大きな売上、利益を出しているわけです。

10年後、20年後、予算に余裕があれば高額なメンテナンス費用を払って「安心」を買う、ということでも良いかもしれません。

ただ、現状の保証内容ですと本当の「安心」が買えるとは言い難い状況ですので、長期保証があったとしても、高額なハウスメーカーのメンテナンスでは無くご自身で別の会社を探してメンテナンスすることも視野に入れて頂くことをオススメします。

2-4. 10、20年後のメンテナンスが重要

様々な建築会社の考え方、リフォーム部門の体制などにより、保証期間が異なります。

ただ、重要なことは「保証の安心」よりも「住宅の定期メンテナンス」です。

これは車のエンジンオイルを定期的に交換するのと同じことです。

将来発生する住宅の修理費を少しでも抑えるためにも、前もった定期点検が必要です。

大手ハウスメーカーでも構いませんし、ご自身でメンテナンス会社を探して割安でメンテナンスでも問題ありません。

まずは点検と、傷んでいるところからメンテナンス・補修を進めましょう。

メンテナンスに関しては下記ページで解説しています。

3.住宅設備・建材に関しての保証と期間

設備・建材

続いて、住宅設備や建材に関しての保証と期間を解説していきます。

基本的に住宅設備や各建材を作っているメーカーの保証期間となります。

保証期間内に不具合があれば無償で対応してもらえます。

3-1.各設備・建材の保証期間の目安

各設備や建材の保証期間の目安を一覧にしてみました。

※扱っているメーカーによって異なるため、参考程度に留めて頂ければと思います。

  • キッチン:2年
  • ユニットバス:2年
  • 洗面台・トイレ:1~2年
  • サッシ:1~2年
  • フローリング:2年
  • ドアなどの建具:2年
  • 外壁材:5年
  • 屋根材:5年
  • 給湯器:3年
  • 換気設備:1年
  • クロス:1~2年

中には、5~10年の無償延長保証をしている設備・建材メーカーもあります。

※ハウスメーカーによっては、主要な設備のみ10年などの長期保証としてウリにしていることもあります。

建築会社の契約前でも、設備の保証期間の一覧表を見せてほしい、と営業マンに頼めば確認できると思います。

引き渡し後には各設備の保証期間をしっかりと確認しておき、できれば期間が終了する前に問題がないがチェックしておくのがいいでしょう。

3-2.無償修理に時間が掛かることがある?

各設備や建材に不具合があった場合、対応までに時間が掛かることがあります。

それは、故障の原因が「メーカー側の製品に問題があるのか」「施工側に問題があるのか」が分からないときです。

時には製品メーカー・施工会社の担当が両方きて確認することもあるでしょう。

最悪、両社で責任のなすりつけ合いが始まることも。

保証があるといっても、修理までは時間が掛かってしまうことは予め覚悟しておきましょう。

3-3.よくある質問:クロスの保証

続いて、新築後によくある質問を2つだけピックアップして解説します。

最初はクロス(壁紙)についてです。

特に多いのが、「保証期間(2年が多い)を過ぎてからクロスが剥がれてきたり、ヒビが入ってきたんだけど、これは施工不良に該当しないの? 施工不良なら無償修理してほしい!」というもの。

実はこれ、非常に難しいんです。

クロスは生ものみたいなもので、住宅内の環境によっては数カ月から数年で気泡が入ったり、剥がれ、ひび割れというのは出てきやすいもの。

これは発生して当たり前、くらいに思っておいた方がいいと思います(賃貸でも当たり前にあります)。

また、クロスの施工だけに原因があるわけではなく、下地の施工に歪みなどがあっても発生しやすくなります。

仕方がない部分、といってしまったらそれまで何ですが、職人たちの感覚からいったら本音は「しょうがない」という感じ。

クロスの状態が酷い場合は、保証期間を多少超えていても親切で対応してくれることも多いので、まずは建築会社に相談してみましょう。

ただし、業者から「直してもまた発生することがあります」と言われることもありますし、どうしても後回しにされることも多いので、それが当たり前くらいの感覚で根気よく交渉するしかないことも理解しておきましょう。

3-4.よくある質問:床鳴りや建具の軋み

続いては、フローリングの床鳴りや建具の軋みなどの不具合に関する質問です。

クロス同様に保証期間が過ぎてから、床鳴りや建具の軋みが発生することもあります。

これも施工不良が原因の時もありますし、下材に問題がある場合もあります。

保証期間を多少過ぎても対応してくれる場合も多いので、まずは建築会社に相談してみましょう。

床鳴りは該当する場所のフローリングを交換する際に、クッション下地を加えたりすればほぼ100%解消されますのでご安心下さい(最悪、自分でもできます)。

4.瑕疵担保(かしたんぽ)制度や保険に関して

点検

続いて、保証の一つ、瑕疵担保(かしたんぽ)制度や、瑕疵担保保険について解説します。

1-1章にて瑕疵担保制度(10年保証の法律)については解説しています。

4-1.瑕疵担保保険の意味

どんな建築会社で家を建てても、基本的な構造分については10年間は保証されるという法律。

しかし、もし新築10年以内に、新築時の工事に不備(瑕疵)が見つかったとして、その時に建築会社が倒産していたらどうするのか。

これを保護するのが「瑕疵担保保険」の役割です。

簡単に説明すると、次の通り。

ハウスメーカーや工務店はこの保険に加入することを義務付けられていて、もしも倒産してしまった後に瑕疵が見つかっても、その保険のお金で補修が受けられる(無償)という仕組み

※潤沢な資金がある大手ハウスメーカーは保険に加入せず「供託(きょうたく)」のケースもあります。供託は、資金を法務局にプールしておいて、万が一倒産してもそのプールしたお金から支払われるという仕組みです。瑕疵担保保険よりも安心感があります。

建築会社はこの保険に必ず加入しているので定期的に保険料を支払っています。

もしも住宅に不備があった場合は保険金で対応してもらえるので、新築後10年間は安心ですよね。

ただし、前述しているとおり、構造部(基礎、柱、屋根など建物の主要部分)・雨漏り・防火性能に対しての保証のみとなりますのでご注意下さい。

4-2.建築会社が倒産してしまったときの対処法

では、もしも実際に建築会社が倒産してしまったときは、どのように対処すれば良いのでしょうか。

新築後10年以内に建築会社が倒産し、不具合がなかった場合

10年以内に点検を行っているリフォーム業者などを探して、瑕疵(不具合)がないかを確認してもらいましょう。

点検自体はどうしても有料にはなってしまいますが、10年以内であれば無償修理が可能ですので、点検してもらうことを強くオススメします。

下記業者で割と安く点検をやっていますので、確認してみてください。

戸建のメンテナンスなら【イエコマ】
※施工エリアに制限があります。

新築後10年以上後に建築会社が倒産した場合

この場合は残念ですが、一切の保証がない状態になります。

10年以上後に構造部に瑕疵(不具合)が見つかっても完全に自己負担での修理となりますので、諦めるしかありません。

やはり新築後10年以内に瑕疵がないかチェックすることが重要だと思います。

5.まとめ

住宅の保証についてお分かりになりましたか?

長期保証だから安心、というわけではないんです。

保証の期間ではなく、建築会社の工事の質で選んでいくことがもっとも重要だと思います。

ハウスメーカー・工務店選びで失敗しないための3つの原因と対策をまとめたページもぜひ覧ください。

 

最後までご愛読いただきまして有難うございました。