今回は住宅における換気の種類に関して解説していきます。
「換気」は住宅において非常に重要な役割をもっています。
住宅が生き物とすると、換気は「呼吸」と同じ役割とイメージできます。
つまり、換気は住宅の健康や長生きに直結するほど大切なものです。
ただ、そんな換気も、実は色んなタイプがあり複雑化していますので、今回は換気のそれぞれのタイプを分かり易く解説していきます。
本記事の内容はこちらです。
- 換気の意味や、それに関連する法律などが分かる
- 色んな換気の種類が分かり易く把握できる
- 新築を計画する上で、どの換気を選べば良いのか分かる
では早速解説していきます。
目次
1.換気の意味は?(空調との違い)
換気の意味くらい分かるよ、という方ばかりだと思いますが、案外「空調」と意味がごちゃごちゃになる方も多いです。
それに、住宅における「換気」が指している意味や、法律で換気が義務付けられている部分など、知らないこともあると思いますので、ぜひお読みください。
上記が誰もが知っている換気の意味ですね。
ちなみに「空調」は「空気を調整する」という意味なのですが、空気清浄器などで空気を綺麗にしたり、空気の温度を調整するエアコンを指すのが基本です。
特にビルやマンションにある空調システムなどは、空気清浄というよりも温度調整の意味合いが強い場合が多く、
「空調」=「エアコン」
と捉えてもあまり問題はありません。
1-1. 全体換気と局所換気の違い
一般的に「換気」のイメージは、
「窓を開けて空気を入れ替える」や「キッチンや浴室などの換気扇を回す」ではないでしょうか。
ですが、戸建て住宅、マンション、ビルなどにある「換気システム」となると全く話は異なります。
これは全体換気と局所換気、と言い換えることができます。
■局所換気
キッチンやトイレ、浴室などを臭いや煙、水蒸気などを部分的に排気することを指します。
短時間で空気が汚れやすい場所に、強力な換気扇を設置して、建物外部に排気をします。
■全体換気
住宅全体の換気を指します。
窓を一切開けなかったとしても、室外の綺麗な空気が吸気され、室内の汚れた空気が排気されるのが全体換気です。
また、この換気方法には何種類かの方法があり、住宅メーカーによって様々な換気システムがあります。
なお、本記事で解説していく「換気」はこの全体換気を指しています。
1-2. 24時間換気が義務付けられている?
上記解説した全体換気ですが、実は2003年頃に「住宅やマンションなどは24時間換気をやり続けなくてはいけない」という法律ができました(建築基準法の改正)。
つまり、現在の新築は24時間の換気システムが導入されている家しか建ててはいけない、というわけです。
もう少し24時間換気のルールを詳しく解説すると以下の通りになります。
この法律が出来たきっかけは「シックハウス症候群」が問題なったからです。
住宅の各部材(壁紙など)に含まれるホルムアルデビドなどの化学物質が原因で、ぜんそくやアトピーが原因になってしまうのがシックハウス症候群です。
ですが、ちゃんと換気を行っている住宅であれば、体内に大量に取り込んでしまうことが無くなるため、この24時間換気の法律が作られたわけです。
2.換気の種類⇒ 自然換気と機械換気
1章までで、住宅の換気イメージが少し固まってきましたでしょうか?
ここでは換気の種類でも、自然換気と機械換気について触れておきます。
まず前提として、換気には新鮮な空気を室内に取り込む「吸気」と汚れた空気を室外に出す「排気」があります。
そして、それぞれの吸気と排気を自然に行う「自然換気」と機械で強制的に行う「機械換気」があります。
■自然換気
マンションやアパートなどの各部屋にある上記画像は自然換気の吸気口です。
見たことがある人が多いのではないでしょうか?
これらの吸気口は外部と繋がっていて、自然に外の空気が中に入ってくるようになっています。
また、排気の場合も排気口を取り付けて「自然換気」にすることは出来ますが、24時間換気の法律の影響で、現在は「排気」の自然換気はありません。
■機械換気
自然換気とは逆で、機械を使って「吸気」「排気」を行うのが「機械換気」です。
局所換気の換気扇とは別に、吸気と排気専用の換気扇によって強制的に換気を行うのが機械換気です。
ここで言う「機械換気」はキッチンやトイレなどに設置する換気扇などの「局所換気」とは異なります。
あくまで全体換気の種類として「機械換気」があります。
3.換気方式の種類
本章では換気の方式の種類について解説していきます。
前章で解説した自然換気と機械換気の組み合わせにより、換気方式の種類・名称が異なります。
その方式は以下の4点あります。
- 第一種換気
- 第二種換気
- 第三種換気
- 第四種換気
以下、換気方式別に表にまとめてみました。
吸気 | 排気 | |
第一種換気 | 機械(ファン) | 機械(ファン) |
第二種換気 | 機械(ファン) | 自然 |
第三種換気 | 自然 | 機械(ファン) |
第四種換気 | 自然 | 自然 |
※第四種換気は、24時間換気の法律があるので、現代の新築では使えません。
つまり、選択肢としては1~3種換気ということになります。
ただ、その中でも、近年の住宅メーカーは「第一種換気」か「第三種換気」がほとんどです。
それぞれのメリット・デメリットを簡単に解説しましょう。
■第一種換気のメリット・デメリット
第一種換気は機械で強制的に吸気、排気を行います。
ですので、換気コントロールがし易く、より高い換気力を発揮できるようになるメリットがあります。
また、後述しますが、機械で1箇所から吸気を行う場合は、空気を綺麗にするろ過フィルターを設置したり、吸気と排気に熱交換器を設けるなどの付加価値を付けやすいメリットがあります。
逆に機械を用いることで、初期投資や今後のメンテナンス費用が上がるデメリットがあります。
■第三種換気のメリット・デメリット
第三種換気は、排気だけをファンなどの機械で行い、吸気は自然吸気です。
室内の一部に排気用の換気扇を何か所から取り付けるタイプになります。機械で排気を行うと、差圧が発生して吸気口から自然に空気が流れる込む仕組みになっています。
第一種換気とメリット・デメリットは全く逆になります。
初期投資やメンテナンス費用が抑えられるメリットがありますが、第一種換気ほど高性能な換気が出来ないデメリットとなります。
4.その他、換気の種類
前章にて換気方式の種類について解説しましたが、その他にも分類できる換気があります。
下記一つずつ解説していきます。
4-1.熱交換式と非熱交換式
出典:ハイブリッドeハウス by 一般社団法人セルフエナジーハウス研究会「決め手は高性能の全熱交換器です」
前章で少し解説しましたが、機械で吸排気を行う第一種換気の場合は、熱交換器を設置することが可能になります。
上記イラストに解説されていますが、簡単に言えば次のようなことができます。
- 夏: 室内の冷房で冷えた空気を利用して(排気)、室外の熱い空気を冷やしてから室内に取り込むことができる(吸気)
- 冬:室内の暖房で温めた空気を利用して(排気)、室外の冷たい空気を温めてから室内に取り込むことができる(吸気)
第一種換気であれば、吸気と排気を1カ所に絞ることができます。
その一カ所で、排気する空気を吸気する空気を熱交換器のフィルター内で交差させる仕組みになっています。
交差すると言っても、空気自体は交わらないようになっていて、熱だけを伝える仕組みになっています。
断熱性能が高い住宅メーカーでは、「魔法瓶のような保温効果」をウリにしているところがあります。
ですが、せっかくの高い保温効果も、換気の際に外気をそのまま取り込んでしまっては、「魔法瓶の蓋を開けている」状態と一緒です。
そこで熱交換機を使うことで、魔法瓶の蓋を閉じた状態で新鮮な空気を取り込むことができるようになるわけです。
つまり、第一種換気でも、この熱交換器付きのメーカーもあれば、設置しないメーカーもあります。
当然設置されているメーカーの方がコストが高くなります。
4-2.直接取り付けかダクト式か
続いて、換気システムの種類で、直接取り付けかダクト式かで分かれてきます。
ただ、ダクト式があるのは第一種換気のみです。
基本、第三種換気でダクト式はありません。
つまり、建物の吸気を一カ所に絞り込む場合、ダクト式になります。
一カ所から吸気し、その空気をダクトを通して家全体に送り込むためです。
上記の熱交換器や、後述するろ過フィルターを設置する場合などは、吸気場所を一カ所に絞るため、ダクトが必要になります。
4-3.空気のろ過フィルターが付いているかどうか
続いて、第一種換気の場合、空気のろ過フィルターが付いている住宅メーカーがあります。
そのフィルターは空気清浄機的な役割を果たします。
吸気場所を一カ所に絞り、その吸気場所にフィルターを設置する形になるので、室内に取り込む空気は全てそのフィルターを通すことになります。
そのフィルターは埃や花粉なども数十%カットしますので、室内の空気は窓を開けている時よりも綺麗になる傾向にあります。
性能が高いフィルターでは、90%以上の花粉をカットしたり、PM2.5などのガスまでカットします。
非常にメリットがあるフィルターですが、コストが上がったり、メンテナンスの手間も増えるデメリットがあります。
5.隙間がない気密性との関連性
前章の熱交換器でも少し触れましたが、換気というのは、住宅の保温効果、特に「気密性」(隙間が無い)部分に深くかかわってきます。
上記イラストの通り、住宅に隙間が無ければ無いほど、換気効率はアップしてきます。
換気システムの性能がどれだけ高くても、気密性が低い住宅であれば意味が無くなってしまいますし、逆に換気性能がそれほど高くなくても、気密性が高い住宅であればしっかり換気できることになります。
各ハウスメーカーで換気システムを比較する場合、気密性にも着目しておきましょう。
なお、気密性を作るのは断熱材の性能によって左右されます。
fa-arrow-circle-right断熱材に関しては下記ページに記載していますのでご参照下さい。
6.第一種換気が当たり前になる時代
24時間換気が義務づけられているほど、換気は住む人の健康維持に大きな役割があります。
また、換気は室内の湿気を逃がす働きもあるので、住宅の長持ちにも大きな役割を担っています。
そんな重要な換気なので、やはり住宅の換気性能が高ければ高いに越したことはありません。
ですので、換気力が高い第一種換気が当たり前の時代になりつつあります。
6-1.省エネ法義務化やZEH普及
2020年に省エネ法が義務化されます。
また、ZEH(ネットゼロエネルギーハウス)の普及も推進しています。
fa-arrow-circle-right省エネ法の義務化やZEHについては下記ページをご参照下さい。
上記ページをご覧頂くと分かりますが、今後ますます、高断熱・高気密で省エネ能力が高い住宅が求められていきます。
そうなってくると、4章で解説した熱交換器設置も必須条件となってくるので、必然的に第一種換気が当たり前になってきます。
ですので、現段階で新築する場合、第一種換気を選択するのが将来を見据えても妥当だと思います。
6-2.第一種換気のメンテナンスのことを把握しておこう
3章で触れましたが、第一種換気は初期費用も上がりますが(その分光熱費は下がる傾向にある)、メンテナンスもポイントになってきます。
特に第一種換気はダクト式が多いので、ダクト内の定期的な清掃を心がけましょう。
fa-arrow-circle-rightダクト清掃のメンテナンスに関しては下記ページをご参照下さい。
fa-arrow-circle-right熱交換器などのメンテナンスも含め、住宅全般のメンテナンスに関しては下記ページをご参照下さい。
7.まとめ
換気の種類はお分かり頂けましたか?
近年の住宅は、換気性能だけでなく、断熱・気密性能も全て挙げていくことで、省エネはもちろん住んでいる人が健康であることに重点をおいています。
その流れは必然でしょう。
ですので、第一種換気で、熱交換器、高性能フィルターを付ける住宅メーカーがどんどん増えています。
初期投資は増加しますが、光熱費というランニングコストは下がってくるはずです。
ぜひ、建築会社を選ぶ際は、換気システムに関しても着目頂ければ幸いです。
最後までご愛読頂きまして有難うございました。