「注文住宅の引渡し前にやる施主検査ってどんなことをやるの?」
「施主検査のチェックポイントを知りたい。特に素人でも分かるチェック方法があれば教えて欲しい。」
そんな疑問にお答えします。
施主検査についてネットで調べてみると、チェックしないといけない項目が多すぎて、ちゃんと確認できるか不安になることがあるかもしれません。
しかし、現実問題、建物は素人が見ても分からないことも多いですし、仮に全ての項目を確認しようと思って頑張っても、平気で5時間オーバーするのは目に見えています。
それに施主検査は概ね完成している住宅をチェックするわけですので確認できることは限られています。
建物内部の重要な構造に問題ないかをチェックするためには、工事中にも現場を見ることが重要です。
本記事では
「施主検査で素人でも確認すべきポイント」
「施主検査前(工事中)に確認しておくべきポイント」
に焦点を当てて解説していきます。
本記事の内容はこちらです。
- 施主検査とは? 本来の検査の目的が分かる
- 施主検査の前(工事期間中)に確認しておくべきことが分かる
- 施主検査当日に素人でも確認しておくべきことが分かる
fa-arrow-circle-right施主検査後の「引渡し」についてまとめたページもありますので合わせてご確認下さい。
では早速解説していきます。
目次
1.施主検査とは
1章では、そもそも「施主検査」とは何か、また、施主が本来検査すべきことは何か、を解説していきます。
キズ、間違い、不具合があれば、施主がそこを指摘し、補修や修理など改善を求めることができる。
※建売の場合は「内覧会」と呼ばれることが多いですが、注文住宅同様に購入前のチェックがあります。
■所要時間
施主検査の所要時間はおおよそ2~3時間程度です。
入念にチェックする場合は4時間ほど掛かる場合があります。
■持ち物
最低限必要、というより、本当に必要なものだけ記載します。
- 打ち合わせ図面
- コーディネート資料
- カメラ(携帯)
以上で大丈夫です。
スリッパ、メジャー、勾配器(傾斜を図るもの)、マスキングテープ(補修箇所の目印)は現場監督が用意(または持っている)しているので必要ありません。
※図面も施主分を用意してくれている場合がほとんどです。
1-1.施主検査で確認すべきこと、工事中に確認すべきことを区分けする
冒頭でも解説しましたが、施主検査の時は概ね住宅が完成しています。
ですので施主検査では壁の中が全く確認できません。
骨組み・断熱材・基礎など、重要な構造部分に異常があるかは施主検査ではさっぱり分かりません。
これは住宅診断(ホームインスペクション)の専門家であろうと同様です。
勾配器で傾きが大丈夫かくらいは確認できますが、通常、現場監督が何度もチェックするほど基本部分なので、近年の住宅で傾いている可能性は限りなく低いでしょう。
施主の方は施主検査で確認できること、確認すべきことを把握することが重要です。
また、工事中にも何度か現場に行き、問題が無いかをチェックする必要があることを認識しておきましょう。
1-2.施主検査で粗探しすべきことが1つだけある
これも冒頭で記載しましたが、施主検査で確認できるポイントは無数にありますので、全部チェックしようと思うと膨大な時間が掛かり現実的ではありません。
また、素人がチェックするにも難しいものもあります。
ですので施主検査ではとあるポイントに絞ってチェックする必要があります。
結論から言うと、以下の通りになります。
例えば、
- キッチンから水が出ない
- 暖房が動かない
- 換気扇から異音がする
など、設備的な問題では、メーカー保証もありますし、後から無償修理してくれます。
建築会社から見ても明らかに「施工不良」「品質不良」ということが分かるからです。
ですが、以下の場合はどうでしょう。
- フローリングの傷
- クロスの破れ
- 外壁材のヒビ
もしもこれらを施主検査で見落としたとして、引っ越し後に気が付くとします。
建築会社側から見たら、引っ越し後に傷・破れ・ヒビが発生した可能性を疑いますよね。
例えば引っ越し業者が傷をつけたとか、物が飛んできて外壁材にヒビが入ったとか。
なので、建築会社側も保証したくてもできなくなってしまうわけです。
施主検査とはあくまでも「仕上がり」を検査するものです。
後から補修してもらえなくなる可能性がある「キズ・軋み・ヒビ」に重点を置いてチェックしていきましょう。
2.施主検査の前(工事中)に確認しておくこと
本章では、施主検査の前(工事期間中)に確認しておくべきチェック項目について解説していきます。
特に素人でもチェックできる部分についてのみをピックアップしています。
例えば、以下のようなものは素人では到底確認することは不可能と思います。
- 骨組みなど耐震構造においての強度
- 換気能力が正常か
- 防水に問題はないか
つまり素人ではどうしても確認できることは限られてきます。
ただ、その限られた項目を確認するだけでも大きな効果がありますので、工事期間中にしっかり確認を取りましょう。
施工会社がどうしても信用できない、全てチェックしたい、という場合は費用が発生しますが住宅診断(ホームインスペクション)業者に依頼するしかないでしょう。
2-1.図面、コーディネート通りか
本当に基本的な部分ですが、工事期間中に図面・コーディネート通りになっているか、定期的にチェックしましょう。
注文住宅の場合、おそらく皆さんが思っている以上に間違いが多いです。
特に、打ち合わせ期間中に要望を繰り返し変更した場合、細かい特殊な要望が多い場合、図面・コーディネートの間違いがとても多くなります。
例えばですが、打ち合わせでフローリングの色を「オーガニックブラウン」にしたとします。
しかし、家に帰ったらやっぱり「ナチュラルブラウン」が良いと思い、営業マンに電話して変更を依頼します。
本来であれば変更した図面やコーディネート資料を新しく作り直し、もう一度施主に確認してもらって承認してもらうべきです。
ただ、工事開始までに時間も無い上に施主の方が仕事で忙しくて図面が確認できない、そんな状況が重なったときこそ間違いが発生します。
現場では変更前の間違った図面やコーディネート資料のまま、営業マンから口頭なり別資料で変更依頼があるわけですので、間違いは発生し易いですよね。
もちろん建築会社の責任で間違っているとすれば、建築会社側で費用負担するのは当然ですので、施主には関係がないと思うかもしれません。
ですが、そのせいで建築工事期間が長引いてしまえば家賃やつなぎ融資などの費用も余分に発生することになります。
さらに、施工をやり直すとすると、どうしても仕上がりは綺麗では無くなってしまう可能性も高くなります。
そう言った意味でも、間取りやコーディネート通りか定期的にチェックし間違いを早期発見することで、被害を最小限に抑えられるでしょう。
2-2.基礎コンクリートに問題がないか
基礎工事中の現場を見に行く施主の方は少ないのですが最低でも1回は見にいきましょう。
誰もが分かることだと思いますが、住宅にとって「基礎」は土台ですから、特に重要なポイントです。
基礎にダメージがあれば住宅の寿命は短くなるのは必然でしょう。
基礎コンクリートが固まった後(基礎工事開始から2~3週間後)に見に行き、ヒビ・傷・隙間が無いか確認しましょう。
大丈夫と思いますが念のため異物が混ざっていないかも見ておくと良いでしょう。
万が一、ヒビや傷があった場合は補修してもらえるように言っておきましょう。
2-3.断熱材に隙間が無いか
工事中にチェックしたとしても、木や鉄骨などの骨組みを含め構造部分に関わる部分の異常を発見することは、素人には難しいと思います。
しかし、断熱材は別です。
日が出ている日中に断熱材をチェックすれば、施工方法に問題がないか、つまり隙間が空いていないかを調べることができます。
これは素人でも十分にできます。
世間にしっかりと認知されていませんが、断熱材は「建物の寿命」「家族の健康」「建物内の換気能力」「光熱費」に関わる非常に重要な部材です。
隙間があるかどうかをしっかりとチェックして、もしも空いている箇所を発見したら現場監督に伝えましょう。
fa-arrow-circle-right断熱材についてまとめたページもあります。
断熱材の施工が終わるタイミングは現場監督が教えてくれるはずです。
3.具体的に施主検査当日にチェックすべきこと
ではいよいよ、具体的に施主検査当日に確認すべき項目を解説していきます。
本記事1章で解説した通り、
「時間的・体力的に十分確認できる量」
「後から補修をしてもらえなくなる部分」
に重点を置いています。
- クロスの傷
- 建具の傷や動作
- クローゼット・キャビネットの中の傷
- フローリングの傷や軋み
- 巾木(はばき)の施工状況、傷
- ポーチタイルのヒビ
- サッシ・雨戸の傷や動作
- ベランダ、屋上の防水加工のヒビや傷
- 外壁材のヒビ、コーキング
- 基礎の立ち上がり・外周の傷
1つずつ簡単に解説していきます。
■クロスの傷
施主検査における最も基本的なチェックポイントです。
天井・壁の隅々までチェックしましょう。
このクロスの傷は「粗探し」と言っても良いくらい、細かく指摘しても問題ありません。
補修難易度は低めです。
ついでにクロスの中に空気の膨らみが無いかも一緒に確認しましょう。
■建具の傷や動作
玄関・ドア・クローゼットの扉などの傷や動作を確認しましょう。
引き戸のレール付近や開き戸の開閉範囲に傷があれば建具が傾いている可能性があります。
開き戸の建具の開閉動作を確認し、窮屈であればすぐに改善してもらいましょう。
建具の調整は自分でも出来ますが、引越し前後の忙しいタイミングで調整するのは大変ですよね。
■クローゼット・キャビネットの中の傷
クローゼットやキャビネットの中のクロス・フローリング・板材の傷は見落とされがちです。
引越しの最中に気付いても後の祭りです。
クローゼットやキャビネットの中に頭を入れて覗き込みチェックしましょう。
また可動できる棚があれば、スムーズに動き、かつしっかり固定できるかも一緒に確認しておくと良いでしょう。
■フローリングの傷や軋み
クロス同様にフローリングの傷もしっかりと確認しておきましょう。
特に体重を乗せた時の軋みが無いかも確認すると良いでしょう。
これはフローリング材の施工不良の問題ですので構造にはまず関係がありません。
とはいえ歩く度に軋み音がすると気になりますよね。
早めに直してもらいましょう。
■巾木(はばき)の施工状況、傷
巾木(はばき)とは上記写真のようにクロスとフローリングの間にある板材のことを指します。
これはクロスとフローリングの間の収まりが悪い部分を隠す目的と、家具などがぶつかった時にクロスに傷がつかないようにする目的とがあります。
この巾木の施工はタッカー(大型のホッチキス)で留めるだけなので、職人によっては雑な仕上がりになるケースがあります。
飛びている針金などは怪我の元にもなりますので、しっかりとチェックして改善してもらいましょう。
私の実経験で、最も補修が多かったのが巾木です。
■ポーチタイルのヒビ
玄関の土間スペース、玄関外のポーチ部分はタイルになっていることがほとんどだと思います。
ポーチタイルは工事期間の中で早めに施工されるため、その後の出入りする様々な業者に踏まれていることになります。
ですのでタイル部分にヒビや傷が出来ている時もあります。
こちらもしっかりとチェックして補修してもらいましょう。
■サッシ・雨戸の傷や動作
サッシは施工時には保護フィルムが貼られていて、工事が終わるころに剥がされるので傷がついてる可能性はかなり低いと思います。
ですが、場合によっては動作不良がありますので、一応チェックしておきましょう。
■ベランダ、屋上の防水加工のヒビや傷
ベランダ・テラス・屋上テラスなどの床部分、防水加工に関してはヒビなど傷が無いか念入りに確認しましょう。
雨水が入ってしまうような傷が見落とされる可能性は低いと思いますが、もしもあると雨漏りの原因となります。
どんな建築会社でも雨漏りは10年の保証があるので金銭的な被害はありませんが、それでも多くの時間が奪われることになりますので絶対に避けるべきです。
■外壁材のヒビ、コーキング
2階以上の高い位置の外壁材はチェックが難しいと思いますが、低い位置だけでも良いので確認しておきましょう。
工事期間中に外壁材に傷がつくことも多々あります。
自然発生的につくあまりに細かい傷は指摘する意味はないと思いますが、万が一ヒビが入っていないはチェックしておきましょう。
また、サイディングの外壁材にはコーキングがあります。
fa-arrow-circle-right外壁材についてまとめたページもあります。
コーキングは施工業者によって技術に差がありますので、下手な業者に当たってしまった場合は全体的にムラができます。
あまりにひどい場合はコーキングの劣化が早くなる可能性が高いため改善を求めましょう。
■基礎の立ち上がり・外周の傷
外壁材のチェックと一緒に、基礎の外周面も確認しておきましょう。
防護フィルムを貼ってある場合が多いのでヒビや傷は少ないと思います。
ですが1カ所でもあると劣化が早くなりますので、慎重にチェックしたいところです。
fa-arrow-circle-right引き渡し・引っ越しが終わった後にやるべきことをまとめたページもあります。
4.まとめ
施主検査におけるチェックポイントや注意点はお分かり頂けましたか?
全てを細かくチェックすることは高いお金を払ってホームインスペクション依頼でもしない限り不可能です。
後から補修してもらえなく傷などに集中してチェックをしていきましょう。
本記事のまとめポイントは以下の通りです。
- 施主検査で確認すべきこと、工事期間中に確認すべきことを区分けする
- 工事期間中は、図面通りか、基礎・断熱材を主に確認しよう
- 施主検査当日は、設備動作よりも、傷やヒビにスポットを当ててチェックしていこう
最後までご愛読頂きまして誠にありがとうございます。