「新築では設計士がサッシ(窓)の提案をしてくれるけど、選ぶ際の注意点ってあるの?」
「サッシ選びで失敗しやすいポイントや具体例が知りたい!」
そんな疑問にお答えします。
新築の間取りを検討する上で、窓・サッシのサイズ、配置など失敗しやすい項目の1つです。
今回はそんな窓・サッシの失敗しないための選び方と、よくある失敗例を7つ解説していきます。
本記事の内容はこちらです。
- サッシの種類やそれぞれのメリット・デメリットが分かる
- 新築で失敗しないサッシの選び方の基本が分かる
- 新築で失敗しやすいサッシの具体例が分かる
1.サッシで失敗しないための選び方ポイント
最初の章はサッシの種類やそれぞれのメリット・デメリットに加え、窓を選ぶ際の重要なポイントを5つ解説していきます。
1-1.窓の種類とそれぞれのメリット・デメリット
窓・サッシの種類やタイプは、細かく挙げるとかなりたくさんに分類されます。
今回は新築で使われる窓の代表例を一部だけピックアップして、メリット・デメリットを解説していきます。
引き違い(ひきちがい)窓
昔から一般的に使われるサッシです。
引き違い窓のメリットは、サッシの中でも安価なものが多く、使いやすい特徴があります。
また、窓を開く際に、外側や内側に開くわけではないので、邪魔になることがなく、大きな開口の窓に最適。掃き出し窓(床まである窓で外に出られるタイプ)によく使われます。
窓には規格サイズがありますが、規格外のサイズにすると料金が高くなりますが、引き違い窓は間取りに合わせてカットする料金も安価に済むことが多いのがメリットの1つです。
デメリットとしては窓を滑らせて開けるという構造のため、サッシに隙間が空いてしまい、他の窓に比べて断熱性能や気密性能が落ちる傾向があります。
また、窓の外側が掃除しづらいという欠点もあります。
縦すべり出し窓
縦のラインを基準にスライドして開く窓です。新築では縦長の窓として頻繁に使われます。
縦すべり出し窓のメリットは多く、3つもあります。
- 開口部に対して窓が全開に開く(引き違い窓は半分になる)
- 窓を開くと、外側のガラスに手が届くので、掃除がしやすい(2階・3階の窓に適している)
- 開いた窓が外の風を遮る役割をするため、室内に風を取り込むのに適している
デメリットとしては、外部に開くので外側の通路に面している場所では邪魔になる可能性が高く、1階には適しません。
2~3枚ほど等間隔で並べるとデザイン的にオシャレになりますが、単体では採光には向いておらず、高額になるケースがあります。また、カーテンもたくさん必要になるため、費用が増加しやすい傾向にあります。
とはいえ、メリットが多いので、重宝される窓だと思います。
横すべり出し窓
横すべり出し窓は、横を軸にしてスライドして開く窓です。
新築では横長の窓として頻繁に使われます。
メリットとしては窓を開けている時も雨が入ってこないので、庇(ひさし)が無い場所に最適です。
また、少し高い位置につけると外からの視線が気にならなくなり、開く角度を調整できることから浴室や脱衣所など水回りに使用されます。
デメリットは縦すべり出し窓と比較すると、風通しが悪いことが挙げられます。
FIX窓(はめ殺し窓)
FIX(フィックス)窓は、大小関係なく、開かない窓を指します。
メリットとしては、開くための取っ手やレバーなどの部品が無くなるので、すっきりとしてデザイン性が高い窓と言えます。
丸い窓など、色んな形状も楽しめます。
また、防犯上も他の窓からは有利と言えます。他の窓のように、手が入るくらいの小さな穴を空けて開錠される心配がないからです。
「外側の掃除がしづらい」、「風通しができない」、というデメリットがありますので、使用する場所は十分に検討する必要があると思います。
上げ下げ窓
上下に窓を上げ下げする縦長タイプの窓です。
メリットとしては、縦すべり出しと比較して、外に窓が開くわけではないので引き違いと同じで外側で邪魔になることはありません。
また、横にスライドする引き違いと異なり、断熱・気密性能は落ちることがないこともメリットの1つです。
デメリットとしては、開口部が小さくなる、風通しが悪いことが挙げられます。
スリット窓(縦・横スリット)
縦、横スリットは、縦長・横長の窓を言います。
FIX窓にすることもすべり出し窓にすることも可能です。
連続させることでデザイン性が高くなるのメリットがありますが、高額になるデメリットがあります。
1-2.断熱や気密性が下がるのは気にするべき?
基本的に、サッシは数が多ければ多いほど、また、サイズが大きければ大きいほど、断熱・気密性が下がってしまい、冷暖房の効率が悪くなります。
そうなれば光熱費が上がりますし、結露が起きやすくなります。
しかし、現在は高気密・高断熱のZEH(ゼッチ)が主流になってきていることもあり、窓やサッシはペアガラス(またはトリプル)・樹脂サッシなど、熱を通しにくいものが当たり前になってきています。
多くの建築会社で結露は起きにくいと考えて良いと思います(家の中で鍋などをすれば別です)。
fa-arrow-circle-rightZEHを知らない方はぜひ下記ページをご参照下さい。
ですので、現代の新築の場合は、小窓の数をたくさんにしても、光熱費について心配する必要はあまりないと思います。
ただ、1.5間(横幅2.73m)以上の大開口の窓を作ったり、部屋の面積の3分の1以上を窓にする場合は高熱も上がりやすいので注意しましょう。
とくに鉄骨や、太い柱の木造のハウスメーカーは、大きく開口を確保できるため、サッシを大きくしてしまう傾向にありますので、注意しましょう。設計士と相談しながら、断熱・気密性能とのバランスも加味しておきましょう。
1-3.採光をとることが最重要
窓・サッシの役割の中で、宅内に光を取り込む機能はかなり重要です。
日光は直接的な光でなくても、例えば北側の窓だったとしても、反射光がしっかりと入り込んでくれますので、各方位バランス良く配置しなくてはいけません。
設計士が作った間取りを眺めてもなかなか意識できないものですが、窓がない部屋はびっくりするほど真っ暗になります。
例えばウォークインクローゼットには洋服に紫外線が当たらないように窓を設置しない間取りが多いのですが、日中でも真っ暗になってしまうため、使い勝手は悪くなります。曇りガラスの小さな窓があるだけでも明るさは大きく変わりますので、しっかりと検討すべきだと思います。
また、何よりキッチン・トイレなどの水回りに窓を付けられるのは戸建て住宅の醍醐味ですので、上手に取り込んでいきましょう(一般的なマンションだと、水回りに窓がない間取りが多くなる)。
ただし、夏場に熱くなってしまう西日や直接的な日光は、取り込み過ぎるとフローリングや家具が日焼けしてしまうというデメリットもありますので十分に注意しましょう。
1-4.眺望を気にする
窓の役割の1つに、室内から見える眺望をアップする機能があります。
例えば「キッチンで調理中に小窓から外の緑(庭)が見えるようにする」など、戸建て住宅ならではのアイデアを盛り込むことが可能です(こだわり過ぎて間取りを壊してしまうこともあるので注意しましょう)。
それに、高い土地で最初から眺望が良い場所なら、その眺望を最大限活かす配置にしたいですよね。
逆に、例えばゴミ捨て場が近い土地ならば、ゴミ捨て場の方向には窓を少なくする、曇りガラスにする、など見えなくする工夫もできるでしょう。
間取りのサッシの位置を検討する際は、土地からの景色をスマホなどでたくさん撮影をしておくと良いと思います。
1-5.風通しを考えるべき?
1-1章で、窓の種類やそれぞれのメリット・デメリットについて記載しましたが、窓のタイプによって風通しを良くしてくれるものがあります。
とはいえ、部屋に窓が1つしかないと、その窓を開けても風通しは良くなりません。吸気・排気のため、別々の壁に2つの窓があって初めて風通しが良くなります。
ですので、設計士は風通しをしっかりと考えてサッシの配置を検討していました。
しかし、近年では、気密性や換気性能が高い住宅が増えてきました。
気密性や換気性能が高い家では、窓を一切開けなくても新鮮な空気がたえず家に入ってきて、かつ汚れた空気や悪臭は短い時間で室外に出るようになっています。
さらには、吸気口にろ過できるフィルターを設置する建築会社も多くなってきていて、窓を開けない方が空気が新鮮、という状況になっているんです。
現代の新築では、風通しはあまり意識しなくてもいいかもしれません。
1-6.デザイン性を考慮しよう
窓・サッシは、室内の使い勝手と同時に、外観のデザインも考慮して配置しなくてはいけません。
もちろんデザイン性も考慮して設計士が配置してくれるとは思いますが、基本的なポイントは把握しておきましょう。
外から見て、窓・サッシはアクセントになります。
外壁の色にサッシの色をうまく組み合わせてデザイン性を上げていきます(サッシは外側と室内側と色を分けることができます)。
また、窓は大きさ・高さ・横のラインなど要所要所で統一しないと、かっこ悪くなってしまう。例えばバルコニーの端とサッシの端でラインを合わせたりすることでかっこ良く見えます。
その他、例えば同じ部屋にスクエアの小窓を6個配置するなど、小窓を集中させてデザイン性を上げることも可能です。
ただし、デザインを上げる部分は道路から見える面だけにしておきましょう。外からあまり見えない面にお金を掛けてもあまり意味がありません。
fa-arrow-circle-right外観デザインで失敗しないための原因と対策も合わせてご参照下さい。
2.新築での具体的な窓、サッシの失敗例7選
ここからは、良くあるサッシの具体的な失敗例を7種類に絞って解説していきます。
fa-arrow-circle-right間取り全般の失敗例をまとめたページもありますので合わせてご参照下さい。
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2-1.縦スリットで防犯の不安になった
「縦スリットサッシは細く縦長の窓で、玄関ホールに3枚並べました。
外から見ても中から見てもかっこ良いので気に入っていたのですが、ふと友人から『防犯大丈夫?』と聞かれてから不安になりました。
設計士や営業マンの方は何も言ってくれなかったのですが、防犯ガラスにしておけば良かったです。」
縦スリットはオシャレですが、一階に設置すると防犯上、危険になる場合があります。
縦スリットは縦長なので、幅20㎝以上空いていれば大人は割って侵入することができます。
引き違い窓はシャッターが付けられますが、小窓は基本付けられないので、長時間家を空ける場合はリスクが高くなります。
念のため防犯ガラスにしておくのが良いでしょう。
2-2.小窓の数をケチってしまった
ハウスメーカーでたまにある失敗パターン。
「となるメーカーで家を建てたのですが、本体価格に含まれるのは小窓が12個まで、ってルールがあったんです。
1個追加すると、5万円も追加料金が発生するというので、勿体ないと思って小窓は12個に絞ってしまいました(引き違い窓は何個付けても問題ありませんでした)。
そのせいで、引き違い窓が多い家になり、外からは見えやすい部屋が多くなるし、光熱費は微妙に高いし、何より外観がダサくなってしまいました。」
小窓は確かに高額ですが、その分、優れたメリットが多々あります。
小窓をケチって少なくすると、大きな後悔に繋がるケースが多いので注意しましょう。
2-3.2階の窓からの転落を気にし過ぎた
土地が、第一種・第二種低層地域で起きる失敗例です。
「低層地域の北側斜線規制のため、北側の屋根が少し下がった家になりました(母屋下げ・母屋下がり・母屋落ち)。そのため、2階の子供部屋の天井の一部が低い間取りになりました。
打ち合わせの時に営業マンの方から『お子様の部屋は普通の引き違い窓の大きさで大丈夫ですか?』と聞かれました。
天井が低いので窓の位置が下がり、子供が外に転落する危険性があるからです。
ですが、営業マンの方に『大丈夫か?』と聞かれたら『大丈夫』と思えるわけもなく、結局窓を小さくしました。でも、外観のバランスが悪くなったし、採光もイマイチになって後悔しています。」
子供の窓からの転落が危険なのは、1~5歳ぐらいの数年程度です。
その間はホームセンターなどで転落防止グッズが販売されていますので、利用することも視野に入れて検討しましょう。
数年のために窓を小さくするのは勿体ないかもしれません。
2-4.階段上部の窓が掃除しにくくなってしまった
高い位置のFIX窓などは掃除がしにくいと言っても、ホームセンターで販売している長いスティックを使ったり、脚立で掃除が可能です。
ですが、階段の高い位置にあるサッシの場合は掃除が大変になります。通路が狭くてスティックは使いづらく、脚立も使用しにくいからです。
上記画像のサッシは、2階の階段ホールと階段自体を明るくするために配置されています。
階段の高い位置にあるとはいえ、2階から掃除用具が届きやすい配置になっているので、清掃しやすいと思います。
しかし、もし手前の腰壁(少し見える手すり)が天井まで壁だったら、かなり清掃しづらくなってしまいますよね。
階段の窓は平面図を見ても、どんな高さに配置してあるのか分かりづらく、見落とされやすいポイントです。
階段のサッシは十分に注意しましょう。
2-5.東西の窓で起きやすい、窓が近隣と向かい合わせ
窓・サッシで最も起きやすい失敗が、窓の位置が近隣と向かい合わせになってしまうケース。
特に大型分譲地などで、一気に注文住宅が建つ場合に起きやすいと言えます。
特にこの向かい合わせは、東西の窓で起きやすい。
南側は採光のために土地のスペースを空けるため(建物を北によせる)向かい合わせになりにくいですし、北側は水回りの小さな窓が多く、北側の住宅も同様に南側を空けているので向かい合わせになる確率はほぼありません。
しかし、東西は隣接する住宅と距離が近く、引き違いなどの大きい窓を使用するケースも多いでバッティングしやすいと言えます。
隣にどんな家が建つか分からなくて、かつ隣地との距離が短い場合、東西の窓をなるべく曇りガラスにするか、小窓にすべきか検討しましょう。
2-6.道路から中が見えやすくなってしまった
道路側に面している窓・サッシは外部からの視線に最も気になるポイントになりますので注意しましょう。
特に2階の地窓(床に面した窓)は外から見えやすくなり、防犯上も危険です。
掃き出し窓も床と接した窓ですが、2階の掃き出し窓はバルコニーに繋がっているので問題はありません。
2階リビングで、デザイン性を重視して縦スリットや床面に近い位置で横スリットを使う場合もあります。
基本、地窓や縦スリット、床に近い横スリットなどは曇りガラスにしておくのが良いでしょう。
2-7.キッチンが想定以上に暗くなってしまった
キッチン周辺は冷蔵庫、食器棚、パントリーなど収納が多くなり、窓・サッシの優先度は下がります。
そのため、住宅が完成してからキッチンが想定以上に暗くなってしまうケースがあります。
特に勝手口があると採光は問題ないと思う人が多いですが、リビングやダイニングのサッシからの光が届かないケースも多く、電気を付けないと暗い状況になりがちです。
マンションならば仕方がないかもしれませんが、せっかくの戸建てのキッチンです。設計士と相談しながら色々考えていけば、収納と窓は上手に共存できるはずです。
ぜひ、明るいキッチンにしていきましょう。
fa-arrow-circle-right収納に関して基礎的な考え方をまとめたページもあります。
3.まとめ
本記事で、窓・サッシの基本的な選び方や失敗しないためのポイントはお分かり頂けましたか?
間取りは設計士の提案やオススメに従っても良いと思いますが、サッシはご家族の生活スタイルや、こんな生活を送りたいという希望、それに外構計画などにも深く関わってきます。
ですので、本記事の基本的な考え方をもとに、どんなサッシにすべきかをご家族で考えて設計士に要望を伝えていきましょう。
fa-arrow-circle-right外構計画は窓・サッシと密接に関係しますので、ぜひ下記ページをご参照下さい。
最後までご愛読頂きまして有難うございました。