「ハウスメーカーや工務店を選ぶ時、工事現場ってチェックした方がいいの?」
「建築会社の工事現場でチェックすべき項目を知りたい!」
そんな疑問にお答えします。
ハウスメーカーや工務店の選び方として、基準となるものは色々あります。住宅性能(商品)、価格、プラン提案、営業マン、サービスなどです。
その中でも、今回は特に「工事現場」という視点から、建築会社の選び方を解説していきます。
- なぜハウスメーカーや工務店を選ぶ時に「工事現場」を見ないといけないのか
- 契約前に各建築会社の工事現場を見る方法や流れ
- 工事現場を見るチェックポイントや具体的な確認項目
私が住宅営業マンを経験してきて、契約前にハウスメーカーや工務店の工事現場を熱心に確認する人がとても少ないと感じていました。
しかし、建築関係者が自分の家を建てるのであれば確実に工事現場を確認します。建築会社選びにそれほど重要な判断材料だからです。
本記事を読めば、建築知識がなくても「工事現場を見るべきであること」、また「工事現場のどこを見てハウスメーカーや工務店を選べば良いのか」がはっきりと分かると思います。
fa-arrow-circle-right基本的なハウスメーカーや工務店の選び方は下記ページにまとめています。
目次
1.工事現場を見てハウスメーカーや工務店を選ばないといけない理由とは?
注文住宅ではなぜハウスメーカーや工務店選びに「工事現場」を確認しないといけないのでしょうか。
本章では理由について解説していきます。
1-1.注文住宅は完成品が見られない
当たり前のことですが、注文住宅では商品を買う前に完成品を見ることができません。つまり「信用」という指標をもとにハウスメーカーや工務店を選ぶわけです。
しかし、皆さんは何を基準に建築会社を「信用」しているのでしょうか?
- 営業マンの話し方や説明内容
- ハウスメーカーや工務店が発信している情報(パンフレットやホームページなど)
- 口コミ情報(インターネットや各建築会社のOBなど)
主に上記3点を基準に「無意識」に信用していることが多いと思います。
ただ、建築業界の関係者ならこのような情報を信用しません。
その理由はそれらの情報は全て施工技術によって裏打ちされるものだとよく理解しているからです。
例えば建築会社が作ったパンフレットに記載されている住宅性能がどれだけ優れていて数字的根拠があろうとも、現場の施工能力が低ければ、自分の家だけその性能にならない可能性が高くなります。
結局、家を建ててからその性能を測ることはできないわけですから。
つまり、ハウスメーカーや工務店を信用するには、工事現場を見ないと始まらないということなのです。
注文住宅に限らず、建売住宅も工事中の建物を見学することは可能だと思います。建売住宅の営業マンに相談してみましょう
1-2.工事現場のレベルは建築会社によって大きすぎる差がある
工事現場を大切にしている会社と、そうではない会社には大きな差があります。
また、大切にしている会社は残念ながら非常に少ないという現実があります。
これは下記オススメの本にも記載ありますが、著者の本多さんは数百社の建築会社を指導してきて工事現場を大切にしている会社は全体の5%ほどしかない、と言っています。
私が所属していた大手ハウスメーカーでも、お客様からのクレームが大なり小なり毎日のようにありました。
もちろんすぐに改善できるクレームや不満は対処するのですが、残念なことに「改善」がされないのです。
つまり、クレームや不満がしっかりと本部なりが情報を吸い上げ、2度と起きないような具体的な対策がされるということが少ないのです。
逆に、この辺りをしっかりとやっている建築会社は日々、改善と進化を繰り返しています。
大きな差が開くのは当然ですよね。
そして、その大きな差は、工事現場を見ればはっきりと分かるのです。
1-3.現場を大切にしないハウスメーカーや工務店を選ぶと最悪の結末になる
私が住宅営業を経験してきた中で、1棟、本当に工事が下手で最悪の仕上りになってしまった建物がありました。
職人が足りなくて無理やり集めた大工だったのです。
そのお客様は憤慨したのはもちろん、完成後に色々な場所を修理したので大きな修繕費がかかりました。
そしてこれは予兆として工事中の現場にもしっかりと表れていたのです。
私は定期的にこの工事現場を確認していたのですが、こんなことがありました。
- 職人が誰もいない中、敷地内の水道が出っ放しだった。
- 積み上がった資材が隣地のフェンスにのしかかってしまい、曲がってしまった(後日、修繕)。
- 台風の直前に行ったら、資材がまとまっておらずゴミが散乱していた。
私の経験上、最も状態が悪かった建物を例に挙げましたが、工事現場が荒れているときは必ず建物の仕上りにも問題があるものです。
これは私に限らず、建築関係者であれば誰もが身をもって体験をしています。
つまり、建物の品質レベルと工事現場の管理レベルは完璧に比例するということです。
断っておきますと、私が勤務していたハウスメーカー全体の品質レベルが低いわけではありません。たまたま良くない職人に当たってしまった事例です
ただ、工事現場をまったく確認せず、現場を大切にしないハウスメーカーや工務店を選んでしまった場合、ひどい仕上がりの住宅を悪びれもせず引渡しされたり、大きなトラブルに巻き込まれてしまうリスクが高いことをしっかりと認識しておきましょう。
fa-arrow-circle-rightコスパという観点から建築会社選びについて解説したページもあります。
2.工事現場の見学方法とは?
2章では、ハウスメーカーや工務店を選ぶ上で、契約前にどのような流れで工事現場を見学すれば良いかを解説していきます。
2-1.まずは住宅営業マンを使って回る
基本的には建築会社の営業マンをうまく使うことがポイントです。
具体的な流れとしては以下の方法で進めましょう。
- まずは気に入った建築会社の営業マンに工事現場を見たいと言い、連れて行ってもらう
- 営業マンから自宅近くの工事現場をいくつかピックアップしてもらい、3ヵ所以上を抜き打ちで回る
この流れが一番自然だと思います。
■まずは気に入った建築会社の営業マンに工事現場を見たいと言い、連れて行ってもらう
ハウスメーカーや工務店の選び方として、多く人が「インターネットで情報収集」⇒「実際に5~10社ほど回る」⇒「2~3社に絞る」と候補を絞っていくと思います。
2~3社に絞った建築会社の営業マン全員に工事現場を見たいと伝えましょう。すぐにピックアップして連れていってももらえるはずです。
最初は営業マンと一緒に工事現場を回り、色々な住宅知識や施工方法を聞くと良いでしょう。
■営業マンから自宅近くの工事現場をいくつかピックアップしてもらい、3ヵ所以上を抜き打ちで回る
営業マンと一緒に回る場合、営業マンは前日に現場を掃除しに行くほど念を入れるはずです(もちろん全員ではありませんが)。
営業マン無しで抜き打ちで見学する現場もあった方が良いでしょう。
営業マンにいくつかピックアップしてもらい自分たちだけで見学するようにしましょう。営業マンは同行を希望しますが、そこはうまく断りましょう。
自分たちだけで工事現場を見学する際、誰もいない状況で中で入るのは危険です。敷地外から確認することを推奨します。
2-2.最低でも2社以上の現場をチェックする
1社に対して何カ所も工事現場を確認するのは大変です。時間もかかるでしょう。
しかし、前章で記載した通り、ハウスメーカーや工務店を選ぶ上では最重要項目と言っても過言ではありません。最も時間をかけるべきです。
そして必ず2社以上の現場を見学しましょう。
本記事で紹介しているチェックポイントは簡単なものばかりですが、それでも素人では1社だけ見学してもなかなか良し悪しが分かりにくいからです。
2社以上の現場をチェックして比較すれば必ず良し悪しが分かるはずです。
3.建築会社を選ぶための工事現場3つのチェックポイント
本章から、実際に工事現場で確認すべきポイントを解説していきます。
具体的な細かいポイントは次章で、本章では3つの要点を解説します。
- 工事環境は万全か
- 品質を保つ努力があるか
- 職人のマナーが悪くないか
1つずつ解説していきます。
fa-arrow-circle-rightなお、契約後の工事現場や施主検査での確認すべきポイントは下記ページでまとめています。
3-1.工事環境は万全か
工事環境とは、現場が「整理整頓」「清潔」にされているかどうか、です。工事環境は基本中の基本であり、もっとも確認しやすい項目と言えます。
もし工事環境が悪い場合、次の4つの可能性が高いと考えられます。
- ハウスメーカーや工務店の「現場監督」が現場を巡回していない
- 「現場監督」が職人を管理・指導していない
- 職人の教育がされていない
- 職人の腕が悪い
資材や工具の整理整頓がされていなかったり、現場が清潔に保たれていない場合、上記ような可能性が高くなります。つまり、トラブルが起きやすかったり、建物の品質が下がりやすい、ということを覚えておきましょう。
なお、この項目を確認する場合は、職人が誰もいない平日の夕方以降か、日曜・祝日が良いでしょう。
3-2.品質を保つ努力があるか
2つ目のポイントは資材・設備などの「品質管理」です。
この確認も簡単です。
例えば、各資材や設備・骨組みがしっかりと防水されているか、傷・汚れが付かないように保護されているか、をチェックしましょう。
特に2社以上の現場を比較すれば、この良し悪しははっきりと分かると思います。
もしも品質を保つ努力を感じない場合、3-1章の「工事環境が悪いことで分かる4つの可能性」はもちろん、建物の寿命が短くなってしまったり、仕上がりに問題が発生するなど、大きな損失につながる可能性が高くなります。
3-3.職人のマナーが悪くないか
続いてのポイントは「職人」のマナーです。
これは実際に工事をしている大工を見ても、誰もいない工事現場を見ても、マナーの良し悪しが分かると思います。
工事現場における一般的なルールや常識が守られているかどうか、を確認することで、これも3-1章の「工事環境が悪いことで分かる4つの可能性」が分かるでしょう。
しかし、何より現場監督や職人、各業者が「施主のことをしっかりと考えてくれているか」が見えてくるはずです。
具体的なポイントは次章で解説します。
4.初心者でも簡単、具体的な確認項目8選
本章では具体的な工事現場の確認項目を8種類、紹介していきます。
- 「工事環境は万全か」は3種類
- 「品質を保つ努力があるかは」は3種類
- 「職人のマナーが悪くないか」は2種類
では1つずつ解説していきます。
4-1.現場の整理整頓ができているか(環境)
工事現場における整理整頓は、8種類のうちもっとも基本的で、かつ重要なチェック項目です。
上記画像は少し煩雑な工事現場です。
資材や脚立などの用具が各所にちらばっています。まだ大丈夫な範囲ですが、これ以上散らかっている現場が1カ所以上あるならその建築会社は注意しましょう。
特に木材のように傷がつきやすく、カビが生えやすい資材を乱雑に扱っているようなハウスメーカーや工務店の場合は辞めておいた方が良いかもしれません。
4-2.ゴミ・廃材はまとまっているか(環境)
これも整理整頓の1種ではありますが、ゴミや廃材がまとまっているかもしっかりと確認しておきましょう。
住宅の工事であれば膨大な量のゴミや廃材が出ます。使用しない木材などの大きなものから、クギなどの小さなものまで必ず出ます。
ちゃんとしている建築会社なら毎工事後にゴミや廃材をまとめているはずです。
職人がいない時に現場を確認してみて、周辺に細かいゴミが大量に転がっていないか、大きな資材はちゃんとまとめられ風で飛ばないように固定されているかを見ましょう。
4-3.近隣などに迷惑が掛かっていないか(環境)
職人のマナーにも関わる部分ですが、近隣や周辺の住民に迷惑をかけないように配慮があるかも重要です。
次のような事例がないか確認しましょう。
- 前面道路に土やゴミ、資材などがはみ出していないか。
- 周辺の道路などについた大きな汚れなど、定期的な清掃がされているか。
- 隣地に土や資材がはみ出していないか、境界のフェンスなどに物が当たっていないか。
知らず知らずに近隣にストレスを与えてしまっていては、住んだ後に良好な関係を築きつらくなってしまいます。
近隣に迷惑をかけたまま放置する建築会社は、そういう施主に対する配慮を真剣に考えていない証拠です。
状態がひどいのであれば、そういうハウスメーカーや工務店は絶対に選ぶべきではありません。
4-4.資材や骨組みなど防水がしっかりとされているか(品質)
防水が徹底されていないと建物の品質には多少なりとも影響がでます。にもかかわらず防水に関して徹底している建築会社は実は多くありません。
防水をしっかりすることで、品質保持だけでなく施主の方が現場を見た時に不安にならずに済みますよね。
下記写真は防水のための保護シートが中途半端になっています。
資材の防水保護を徹底している建築会社を選びましょう。
また、骨組みに関しても同様です。
これは木材における工法は問いません。軸組工法(在来工法)であれば上棟時に屋根まで組み上げることが多いですが、屋根があっても雨ざらしは骨組みにダメージを与えます。
もちろん、ツーバイフォー工法ならなおさらですね。
fa-arrow-circle-right木材工法については下記ページにまとめています。
ちなみに、下記画像のようにしっかりしているハウスメーカーや工務店なら理想的と言えるでしょう。
4-5.土間・基礎のコンクリートの仕上りに問題ないか(品質)
これは【施主検査のチェックポイントとは?】素人でもできる方法を解説!でも解説していますが、基礎や土間などのコンクリート部分の仕上りについて確認しておきましょう。
本当なら構造にかかわる部分をチェックできれば良いとは思いますが、プロでなければそれは難しいはずです。
しかし、コンクリートの表面にひびが入っているかどうかをチェックするのは簡単です。
基礎部分は別業者の「基礎屋」に依頼して作ってもらうものですが、その仕上りを大事にしているかどうかはハウスメーカーや工務店の姿勢に表れます。
建築会社が良い業者を選別しているか判断できるポイントなのです。
基礎や土間コンクリートにヒビが多い場合は、その建築会社は避けた方が良いでしょう。
4-6.様々な建材や設備に養生がされているか(品質)
中盤~終盤くらいの工事を見学する際は建材や設備にしっかりと養生されているかを確認しましょう。
傷や汚れが付かないように養生しているかどうかも品質管理においては重要なポイントです。なるべく中に入らせてもらって確認しましょう。
フローリングやカウンターなどの木材、サッシ、キッチンや洗面台などの設備に養生がされているか、剥がれなどがないかも見てみましょう。
4-7.タバコが現場に落ちていないか、など最低限のマナーは守られているか(マナー)
職人や各業者のマナーをしっかりと確認しておきましょう。
特に建物内部でタバコの吸い殻が一本でもあった、という場合、その建築会社は要注意です。タバコが落ちていてももちろん職人や関係者でない可能性もあります。
しかし、万が一、大工や関係業者であるなら、現場監督の管理が行き届いていない可能性が高いと思った方が良いでしょう。
その他、例えば柱にクギを指して上着をかけていた、など、常識的な範囲を逸脱していることが分かった場合もその建築会社は避けた方が無難です。
4-8.ヘルメットなど安全装備の管理は大丈夫か(マナー)
職人がヘルメットを着けていない、とか、見学者用のヘルメットを用意していないようなハウスメーカーや工務店も止めるべきです。
そもそもそんな当たり前のルールが守れない職人がいる場合、ほぼ確実にマナーが悪いと考えた方が良いでしょう。
また、安全管理がしっかりしていない建築会社なら、高い頻度で怪我人が発生し、人手不足が深刻化、突貫工事をされる可能性も高いことになります。
良い建築会社はこういう基本的なことこそ大事にしているものです。
5.まとめ
ハウスメーカーや工務店の選び方は「工事現場を見て判断しなくてはいけない」ということがお分かり頂けましたか?
本記事のまとめポイントはこちらです。
- 工事のレベルは建築会社によって大きな差がある。レベルが低い会社を選んでしまうと大きな損失が発生する。
- 契約前に工事現場を確認する場合、2社以上の営業マンにうまく依頼する。
- 工事を確認するポイントは「環境」「品質」「マナー」の3つ。
工事現場を何度も確認するのはとても大変ですが、大きな後悔をしないようにチェックしてもらえると幸いです。
なお、建築会社選びで失敗しないためには、失敗の原因をしっかりと把握しておく必要があります。
ぜひこちらの記事もご参照下さい。
最後までご愛読頂きましてありがとうございます。