「住宅ローン減税(控除)とは、どんなものなの?」
「住宅ローン減税の条件や期間・控除額の目安などが知りたい」
そんな疑問にお答えします。
住宅購入者にとって何百万円と税金が安くなる「住宅ローン減税」は、国の補助(住宅購入支援策)では最大で、最も魅力的なものです。
さらに2018年12月、消費税増税後に住宅購入支援策として住宅ローン減税が3年間延長されることが正式に決まったと発表がありました。
そのことも含め、住宅ローン減税の全容を解説していきます。
本記事の内容はこちらです。
- 住宅ローン減税(控除)の対象・条件・期間などの全容
- 住宅ローン減税の借入額・年収別の控除額目安
- 住宅ローン減税期間中に繰り上げ返済すべきか
では早速解説していきます。
目次
1.住宅ローン減税(控除)の意味とは?
では最初に、住宅ローン減税とは何か、概要から解説していきます。
住宅ローン減税の正式名称は「住宅借入金等特別控除」と言い、また「住宅ローン控除」とも表現される場合があります。
呼び方が異なっても、全て同じ意味です。
一定の期間、住宅ローン残高の一部の金額を、税金(所得税・住民税)から控除する制度。
簡単にまとめると、住宅ローンで新築購入したりリフォーム・増改築をすると、一定期間、税金が安くなるわけです。
税金は基本的に所得税から引かれますが、所得税では足りない分は住民税から引かれる形になります。
リフォーム・増改築は対象となる条件の場合のみ、住宅ローン減税が受けられます。詳しくは2-3章に記載しています。
1-1.住宅ローン減税(控除)の概要を解説
続いて、住宅ローン減税の概要・全体像を解説していきます。
項目 | 内容 |
住宅ローン減税の期間・年数 | 10年 (※1) |
---|---|
最大控除額 | 400万円(40万円×10年) (※2) |
控除率 | 年末の住宅ローン残高の【1%】 |
適用期間 | 2021年12月31日までに住宅へ入居(居住を開始) |
備考 | 増税後も控除額に変更なし 住民税からの控除上限額13.65万円/年 |
補足 | ※1 増税後、一定期間のみ3年延長 ※2 長期優良住宅、低炭素住宅の場合、500万円 |
住宅ローン減税の覚えておくべきポイントとしては、以下の通りです。
- 住宅ローン残高の1%が控除額となるので、住宅ローン借入額が大きければ大きいほど、控除額も大きくなる。
- 10年間の控除期間中、毎年住宅ローン残高が減少するので、毎年控除額も少しずつ下がる。
- 支払っている税金(所得税+住民税)が少なければ最大控除額は下がる。
なお、住宅ローン減税は、注文住宅・建売・マンション・中古住宅(建売、マンション)どちらも適用されます。
また、注文住宅の場合、住宅ローンで「土地」を購入している分も適用されます。
土地は戸建を建てる全体で購入した場合に限ります。その他の理由でローンで購入しても、住宅ローン減税は適用されません。
2.住宅ローン減税(控除)の対象や条件とは?
住宅ローン減税(控除)には、対象・条件が5点あります。
その条件をクリアしていないと控除を受けることは出来ませんので注意しましょう。
※ただ、住宅ローンで普通に家を建てれば(購入すれば)、問題無く控除を受けることが出来る簡単な条件です。
1つずつ見ていきましょう。
1.住宅ローンを組んでいる本人が取得または増改築した日から6ヶ月以内に入居し、各年の12月31日まで引き続いて住んでいること
住宅を購入、またはリフォーム・増改築、引き渡し日から半年以内に住んでいれば問題ありません。
何かしらの理由で住宅ローン名義の本人が引越しした場合はその年から減税されてなくなります。
※転勤の場合で、単身赴任する場合は引き続き控除を受けることができます。
⇒ 詳しくは国税庁のサイトをご確認下さい。
2.床面積が50m2以上であること
購入・またはリフォーム・増改築した住宅の延床面積が50平方メートル以上であれば問題ありません。
坪数に直すと、約15.1坪以上の広さです。
マンションの場合は、専有部分の床面積です。
ただし、延床面積の2分の1が居住空間という条件があるので、半分以上が仕事用のスペースで申請している場合は減税対象外になります。
3.借入金の償還期間が10年以上であること
住宅ローンの借入期間が10年以上であれば問題ありません。
リフォームや増改築の場合でもなるべくローン返済期間を10年以上で設定しておきましょう。
4.ローン借入先が金融機関であること
住宅ローンの借入先が通常の銀行などの金融機関であれば問題ありません。
家族・友人・知人などから借りている場合は対象外になります。
5.控除を受ける年の合計所得金額が3千万円以下であること
世帯年収が3,000万円以上の方は控除が受けられません。
2-1.中古住宅の条件
中古物件の場合でも、基本的な条件は新築住宅と変わりませんが、一部追加条件が2つあります。
1.購入した中古住宅の築年数が一定以下であること
耐火建築物以外の場合(木造など):20年以内に建築された住宅であること
耐火建築物※の場合:25年以内に建築された住宅であること
築20年、または築25年以内であれば問題ありません。
2.今の耐震基準に適合している住宅であること
以下3つのいずれかに該当すれば問題ありません。
- 耐震基準適合証明書がある
- 既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)がある
- 既存住宅売買瑕疵保険に加入
耐震基準に適合しているかどうかは、必ず購入前に確認しましょう。
2-2.リフォーム・増改築の条件
リフォーム・増改築の場合の条件も、基本は新築と同じです。
ただし、以下のいずれかに該当したリフォーム・増改築で無いと適合されませんので、注意して下さい。
まず、前提として、リフォーム工事費が100万円を超える場合のみが該当します。
かつ、下記6つのいずれかに該当していれば減税対象となります。
- 増改築、建築基準法に規定する大規模な修繕又は大規模の模様替えの工事
- マンションの専有部分の床、階段又は壁の過半について行う一定の修繕・模様替えの工事
- 家屋のうち居室、調理室、浴室、便所、洗面所、納戸、玄関又は廊下の一室の床又は壁の全部について行う修繕・模様替えの工事
- 耐震改修工事(現行耐震基準への適合)
- 一定のバリアフリー改修工事
- 一定の省エネ改修工事
なお、上記住宅ローン減税に適合しない場合や、省エネ・バリアフリー改修の場合は、リフォーム専用の減税もありますので参照して、どちらが得か見極める必要があります。
リフォーム減税に関しては下記サイトをご参照下さい。
一般社会法人 住宅リフォーム推進協議会 > リフォームの減税制度
3.住宅ローン減税(控除)が3年間延長すると発表?
2019年10月から消費税が10%に増税されます。
当然、住宅業界では増税の反動により、家が売れなくなってしまいます。
それでは経済状況が悪くなってしまうため、政府は冷え込まないような対策として、住宅ローン減税を延長する旨を発表しました。
増税後の住宅ローン減税の控除期間3年延長が税制改正大綱に盛り込まれたとのこと。
控除期間11年目以降の3年間は、住宅ローン残高の1%か、建物価格の2%を3年で割った額のいずれか小さい方、という変則的な形になるそう。
増税負担が大きい人ほど控除が増える形ですかね?https://t.co/Ul5KzyOSnC
— あずた@元住宅営業トップセラー (@todo4x) 2018年12月25日
対象期間: 2019年10月1日~2020年12月31日までの間の入居(予定)
1年3ヶ月間という短い期間のみ、対象になるわけです。
控除期間: 現行10年⇒13年間
控除額: 10年間は住宅ローンの年末残高の1%と現行と同じ
11~13年目に関しては変則的となり、以下のような形になります。
次の2つの項目のうち、いずれか小さい額が適用される
- 住宅ローン年末残高(4,000万円が限度)× 1%
- 建物購入価格(4,000万円が限度)× 2% ÷ 3
3-1.住宅ローン減税3年間延長することで、控除額はどれくらい増える?
具体的な控除額を算出してみましょう。
■例1
建物+工事費2,500万円、土地1,500万円
住宅ローン借入額:4,000万円
返済期間:35年
世帯年収:600万円
金利:0.8%
月々の返済額:約110,000円
最初の10年間の控除額合計: 約325万円
11年目の住宅ローン年末残高:約2,900万円
- 計算式1:住宅ローン残高2,900万円×1%=29万円
- 計算式2:建物購入価格2,500万円×2%÷3=17万円
11年目の控除額は「17万円」
また、12・13年目も計算式2が適用されるので、
例1の場合、住宅ローン控除期間が3年間延長することで控除額が「51万円」増加します。
8⇒10%の増税により「50万円」税金が増えていたので、ちょうど増税負担分が相殺される形になります。
土地に対して消費税は発生しません。
■例2
建物+工事費3,000万円(建替)
住宅ローン借入額:3,000万円
返済期間:35年
世帯年収:500万円
金利:0.8%
月々の返済額:約82,000円
最初の10年間の控除額合計: 約250万円
11年目の住宅ローン年末残高:約2,150万円
- 計算式1:住宅ローン残高2,150万円×1%=21.5万円
- 計算式2:建物購入価格3,000万円×2%÷3=20万円
11年目の控除額は「20万円」
また、12年目も計算式2が適用、13年目は計算式1が適用され、
例2の場合、住宅ローン控除期間が3年間延長することで控除額が「59万円」増加します。
8⇒10%の増税により「60万円」税金が増えていたので、ちょうど増税負担分が相殺される形になります。
いかがでしょうか?
延長した3年間の計算式は複雑に思えますが、実は増税負担分を相殺するような計算になっているだけなんです。
覚えやすいですよね。
なお、増税の反動対策は住宅ローン減税だけでなく、下記のような様々な対策がありますので、増税後の方が得になる可能性が高いです。
増税後の反動冷え込み対策が概ね確定したニュース。
次世代住宅ポイント
住宅ローン減税3年延長
住まい給付金の拡充
贈与税非課税枠の拡充この4本立て。
ZEHの補助金含めると5本ですかね。増税後の武器は揃っているので、営業マンは最大限に活かすだけ。今から準備を。https://t.co/RCDo8PYYsQ
— あずた@元住宅営業トップセラー (@todo4x) 2018年12月22日
ただし、住宅ローン金利が上がる可能性も考えると、増税後の方が得になるとも限りません。
fa-arrow-circle-right住宅購入のタイミングについては下記ページにまとめています。
4.住宅ローン減税はいつから始まるの?
続いて、住宅ローン減税がいつから始まるのかを解説していきます。
まず、住宅ローン減税を受ける初年度は、自身で「確定申告」をしなくてはいけません。
12月31日までに住宅購入をした年です。
住宅購入した年とは、12月31日前に住居している必要があります。もしも住居が年をまたぐ場合は、初年度の確定申告が翌年になります。
確定申告は2月中旬~3月中旬となります。
確定申告手続きの後、住宅ローン減税がいつから始まるかは国税庁のサイトに掲載されています。
確定申告後、おおよそ1~1ヶ月半程度で振込されます。
※早まる場合も事例としてあるようです。
4-1.2年目以降の還付について
2年目以降に関しては、会社員であれば、年末調整と一緒に処理ができるので確定申告は不要となります。
2年目の10月頃に年末調整に必要な書類が税務署から送付されてきます。
その書類を年末調整をやってくれる会社に提出すれば、年末調整と同じ要領で還付金が受け取れます。
もちろん、自営業の方は毎年確定申告となりますので、初年度と変更はありません。
会社員だったとしても、本業以外の所得が20万円以上ある場合など、自身で確定申告しなくてはいけない場合は住宅ローン控除についても同様の扱いになりますのでご注意下さい。
5.住宅ローン減税の控除額の目安は?
住宅ローン減税の控除額の目安について解説していきます。
2019年10月1日~2020年12月31日までの間の入居の場合、控除期間は3年間延長して13年間となります。
その延長した3年間の控除額については本記事3章で解説していますので、本章では10年間の控除額の目安についてのみ解説します。
まず、控除額は人それぞれ以下の要因で異なります。
- 住宅ローン借入額(年末残高)
- 所得税や住民税の納税額
- 長期優良・低炭素住宅の認定の有無
また、住宅ローン借入額や所得税の納税額がどれだけ大きくても、控除額の最大は400万円以下(年間40万円以下)となります。
長期優良住宅・低炭素住宅の認定があれば、控除額の最大は500万円となります。ただし、長期優良住宅や低炭素住宅の認定を取るのに10~20万円の費用も発生するので必ず得になるわけではないのでご注意下さい。
人それぞれ控除額が変動しますので、本章で解説するのは、あくまでも広範囲での目安となりますのでご了承ください。
■例1 住宅ローン借入額3,000万円
世帯年収:500万円
金利:0.8%
月々の返済額:約82,000円(35年ローン)
10年間の控除額合計: 約248万円
■例2 住宅ローン借入額4,000万円
返済期間:35年
世帯年収:700万円
金利:0.8%
月々の返済額:約110,000円(35年ローン)
10年間の控除額合計: 約344万円
■例3 住宅ローン借入額5,000万円
返済期間:35年
世帯年収:600万円
金利:0.8%
月々の返済額:約136,000円(35年ローン)
10年間の控除額合計: 約329万円
■例3 住宅ローン借入額6,000万円
返済期間:35年
世帯年収:800万円
金利:0.8%
月々の返済額:約164,000円(35年ローン)
10年間の控除額合計: 約400万円
上記が目安となります。
なお控除額をもう少し正確に算出されたい方は、下記サイトで必要事項を入力すれば簡単に算出ができます。
fa-arrow-circle-right国土交通省「すまい給付金簡単シミュレーション」
6.住宅ローンの繰り上げ返済は控除期間中はしない方がいいの?
住宅ローン減税の控除期間中は繰り上げ返済をしない方が良いのか、これは非常に難しいポイントです。
住宅ローンの繰り上げ返済はなるべく早めに返した方が利息減少の効果が大きいものです。
fa-arrow-circle-right繰り上げ返済に関しては下記サイトにまとめています。
しかし、住宅ローン減税はローン残高が大きければ大きいほど、控除額が大きくなります。
ですので、繰り上げ返済はせずに貯蓄し、控除期間が終了する10年後に一気に返済した方がお得になるのでは? という疑問が浮かびます。
特に住宅ローン減税は残高の1%となるわけですから、金利が1%未満の場合は繰り上げ返済しない方が良いのでは、と思えます。
この疑問に対し、色んなファイナンシャルプランナー・銀行の方がサイトやブログで返答していますし、実際に私も色んな人から話を聞きましたが、皆さん答えはバラバラです。
そうなるのは当然で、金利や住宅ローン借入額・年収・繰り上げ返済額によってどちらが得か分かれてしまうからです。
6-1.繰り上げ返済する方が得かは、特に「金利」で決まってくる
諸条件により、繰り上げ返済をどんどんした方が良いのか、10年後に一気にした方が良いのかが分かれてきますが、
その中で特に「金利」の大きさで決まってきます。
例を出して検証していきましょう。
金利0.6%と1.2%で比較(10年間変動しないと仮定)
- 住宅ローン借入額4,000万円
- 毎年50万円ずつ繰り上げ返済するか、10年後に500万円一気に繰り上げ返済するかを比較(期間短縮型)
- 年収は最大控除額が受け取れると仮定して800万円以上と設定
■金利0.6%の場合
毎年50万円ずつ繰り上げ返済: 800,000円利息減少
住宅ローン控除額:3,260,000円(10年間)
得になる金額合計: 4,060,000円
10年後500万円繰り上げ返済:687,000円利息減少
住宅ローン控除額:3,520,000円(10年間)
得になる金額合計: 4,207,000円
答:10年後に一気に500万円繰り上げ返済した方が147,000円得になる
■金利1.2%の場合
毎年50万円ずつ繰り上げ返済: 1,765,000円利息減少
住宅ローン控除額:3,334,000円(10年間)
得になる金額合計: 5,099,000円
10年後500万円繰り上げ返済:1,473,000円利息減少
住宅ローン控除額:3,561,000円(10年間)
得になる金額合計: 5,034,000円
答:毎年50万円ずつ繰り上げした方が65,000円得になる
上記のように金利によって、どちらが得か逆転現象が起こります。
それに上記は住宅ローン控除額を最大値で計算しましたが、支払っている税金が下がれば控除額も下がりますので、年収によっても異なります。
住宅ローンの借入額によっても変わります。
変動金利を選択していれば、後々金利が上がる場合だってあります。
ですので、人それぞれの細かい諸条件によってどちらが得が異なるため、どちらが良いとは言えません。
ただ、もしも変動金利を選択されているのであれば、金利上昇のリスクを考えると早めに繰り上げ返済していくのが良いでしょう。
fa-arrow-circle-right2019年以降の変動・固定金利どちらを選ぶべきかまとめたページもあります。
7.夫婦で住宅ローンを組んだ場合、控除はどうなるの?
住宅ローン減税の中でよくある疑問、夫婦で住宅ローンを組んだ場合について解説します。
「連帯債務者」として夫婦で住宅ローンを組んだ場合、住宅や土地を登記した時の持ち分割合に応じて、それぞれ住宅ローン控除を受けることができます。
単純に夫2,000万円、妻2,000万円、合計4,000万円の住宅ローン(持ち分は50%:50%)であれば、それぞれ2,000万円分の控除を受けられます。
ただし、住宅ローンを組む際、夫名義として、妻の収入合算という場合は、夫のみが住宅ローン控除を受けられることになります。
この場合、夫のみでの借入可能額を超えていた借入になっている場合があるので、所得税・住民税が少なく、控除額が減少する可能性がありますので注意が必要です。
8.まとめ
住宅ローン減税(控除)とは何か、また控除額の目安を解説してきましたが、お分かりになりましたでしょうか?
本記事のまとめポイントは以下の通りです。
- 住宅ローン減税は住宅購入支援の中で最も金額を大きい補助です。
- 住宅ローン減税は新築・マンション・中古物件・リフォームでも条件が合えば控除を受けられます。
- 住宅ローン減税を受けるには、初年度に自身で確定申告を行い、その1ヶ月~45日前後までに支給されます。
- 控除額は住宅ローン残高の1%を最大400~500万円以下の金額で10年間受け取れます。
最後までご愛読頂きまして誠に有難うございます。