【燃える断熱材を選びたくない!】住宅火災を予防するための考え方

「住宅火災が心配で、できれば燃えない断熱材を選びたい! どの断熱材が燃えないの?」

それを調べてたくて本ページに訪れた人も多いと思います。

いろいろな断熱材に関するサイトやブログを調べると「〇〇の断熱材は燃えやすい」などの注意点が書かれています。

しかし、それらの情報は古かったり、また他社の断熱材よりも優れているというアピールのための情報が多いのが現状です。

本記事では、現在(2019年8月を基準)の断熱材が燃えやすいのかどうか、また住宅火災を予防するための正しい考え方を解説していきます。

本記事を通して、断熱材や住宅火災についての正しい知識を身に付けて頂ければ幸いです。

本記事の内容
  • 燃えやすい断熱材があるのか、正しい断熱材の情報
  • 各建築会社で告知されている「燃えにくい」断熱材の真相
  • 住宅火災で予防すべきこと

では早速解説していきます。

1.「燃えやすい断熱材」という古い情報に惑わされない

燃える断熱材

最初の章では、近年の断熱材が燃えやすいのかどうか、古い情報に惑わされないように正しい情報をお伝えしていきます。

断熱材が燃えやすいかどうか、良く言われるのが次のようなことです。

  • 硬質ウレタンや発泡ウレタンは燃えやすい
  • ウレタンフォームは燃えると有毒ガスが発生する
  • グラスウール・ロックウールは燃えにくい

 

特に発泡プラスチック系断熱材が火災には弱いという情報が多いと思います。

では実際はどうなのでしょうか?

 

1-1.どの建築会社や断熱材メーカーも「燃えにくい」と告知している

まず、2019年8月現在、発泡プラスチック系断熱材を使っているハウスメーカーの一部をリストアップしてみます。

  • ヘーベルハウス(ネオマフォーム)
  • アイフルホーム(ネオマフォーム)
  • 一条工務店(硬質ウレタンフォーム)
  • ウィザースホーム(発砲ウレタンフォーム)
  • 桧家住宅(発砲ウレタンフォーム)

 

その他のメーカーでも、例えば床や天井のみ発泡プラスチック系断熱材を使っているメーカーも多数あります。

それらのメーカーを調べると、ほぼ確実に「燃えにくい」と告知されています。

各メーカーが燃えにくいと表現する根拠・理由は次の3つのパターンに分類されます。

断熱材が燃えにくい根拠3パターン
  1. 建築基準法における防火材料(不燃材料・準不燃材料・難燃材料のいずれか)に認定されている
  2. 日本工業規格による硬質ウレタンフォームJIS A 9511、9526、1321などに適合した難燃性の製品である
  3. 30分防火構造・45分準耐火構造大臣認定を取得している

この3パターンは発泡プラスチック系断熱材以外におけるほとんどの断熱材にも当てはまります。

また、建築会社によっては上記2と3を組み合わせて告知している場合もあります。

 補足
3つ目の「30分防火構造・45分準耐火構造大臣認定」を簡単に説明すると、断熱材そのものではなく「その他の建物の構造によって建物全体が燃えにくく作られている」という認定基準です。

つまり、それぞれ認定基準の差はあるものの、近年使用されている断熱材はどれも「燃えにくい実験の基準」をクリアしていることになります。

また、人体に多大な影響があるような有毒ガスや煙が発生することもあり得ません(有毒物質が発生しないことも認定基準になっている)。

つまり、現段階で燃えやすく・有毒ガスを発生する断熱材を使用しているハウスメーカーや工務店はほとんどないのです。

 

1-2.断熱材の「燃えにくい」ってどれくらいなの?

各建築会社が「燃えにくい」と表現していますが、具体的にはどれくらい燃えないのでしょうか?

上記3パターンの1つ目「建築基準法における防火材料」を例にしてみましょう。

まず、防火材料に認定される条件は以下の通りです。

防火材料の条件

(建築基準法施行令第108条の2)

  • 第1号 燃焼しないものであること。
  • 第2号 防火上有害な変形、溶融、き裂その他の損傷を生じないものであること。
  • 第3号 避難上有害な煙又はガスを発生しないものであること。

また、加熱を始めてから、3つの条件を満たす時間の長さに応じて「不燃材料」「準不燃材料」「難燃材料」の3つにランク付けされています。

  • 難燃材料:加熱開始後5分間
  • 準不燃材料:加熱開始後10分間
  • 不燃材料:加熱開始後20分間

 

この基準は断熱材に限らず、クロス(壁紙)や石膏ボードなど様々な建材にも当てはまります。

1番燃えにくい「不燃材料」と認定されていても、20分間を過ぎると燃えることになります。

しかし、これはあくまでも1つの「基準」でしかなく火災の状況によって「燃えやすさ」は変わってしまうため、かなり曖昧な基準であることは把握しておきましょう。

ちなみに、住宅火災時には通報後、約15分以内に消化活動が開始されるそうです。

「燃えにくい」というのは、この消化開始までの時間を確保することを目的とした基準なのです。

まとめると、近年の断熱材のほとんどは、この消化開始までの時間を確保するための基準をクリアしていることは確かですが、その基準は曖昧で実際には火災状況によって異なるため、安全と言える断熱材はないということです。

 

1-3.超ローコストメーカーやローコスト工務店、建売は注意

断熱材のほとんどが「燃えにくい」という基準をクリアしていることを解説しましたが、価格が異常に安い建築会社は注意が必要です。

特に坪単価30万円以下の「超」がつくようなローコストのハウスメーカー・工務店・建売は注意しましょう。

価格が安い建築会社は必ず燃えやすい断熱材を使っている、というわけではありませんが、どこの断熱材メーカーのものを使用しているかは念のため確認しておきましょう。

 

2.断熱材に「燃えない」ことを求めるのは意味がない?

火気厳禁の断熱材

前章にて、断熱材が「燃えにくい」という基準をクリアしていることは確かですが、安全を確保できるわけではないことを解説してきました。

本章では「近年の住宅火災の現実」と、「断熱材の素材を比較してもあまり意味がない」ことを解説していきます。

 

2-1.住宅火災の現実

住宅火災について、押さえて欲しいポイントは2つです。

  • 住宅火災は5~10分で500度を超え、フラッシュオーバーが起きると1000度を超える
  • 最近の住宅はビニル素材やプラスチック素材が多く、煙による一酸化炭素中毒で意識を失いやすい

 

1つずつ解説します。

■住宅火災は5~10分で500度を超え、フラッシュオーバーが起きると1000度を超える

防火材料の測定温度は750度です。しかし、住宅火災は5~10分で温度が500度を超える速度で上昇します。つまり、20~30分で基準の750度は超えてしまいます。

また、運悪くフラッシュオーバー現象が起きてしまえば、アッという前に1000度を超えてしまうのが現実。そうなってはどんな断熱材でも燃えてしまうリスクがあるのです。

 

■最近の住宅はビニル素材やプラスチック素材が多く、煙による一酸化炭素中毒で意識を失いやすい

そして、近年の住宅火災で一番恐ろしいのは「一酸化炭素中毒」です。

確かに最近の住宅建材は「燃えにくい」「有毒物質が発生しない」ことは確かですが、反面、ビニル素材やプラスチック素材が多く、黒い煙が発生しやすい特徴があります

これは建材に限らず、家具・家電でも同様です。

つまり、昔に比べて一酸化炭素中毒によって意識を失ったり死亡するケースが増えているのです。

 

2-2.断熱材が燃えやすいかどうか、素材を比較しても意味がない

前述してきた通り、燃えやすいとされているウレタン系断熱材でも「燃えにくい」という基準をクリアしてきていますので、どんな断熱材でも一定以上の安全は確保している言えます。

しかし、近年の住宅火災の現実を踏まえると、そもそも断熱材が燃えやすいかどうか、素材を比較すること自体があまり意味がないのです。

確かに断熱材だけを考えれば、素材によって燃えるまでの時間に多少の差があるかもしれません。

ただ、断熱材はクロス(壁紙)・石膏ボード・木板に囲まれています。

断熱材だけを基準に「〇〇の断熱材は燃えやすいから止めた方が良い」という判断は無意味でしょう。

住宅火災のリスクを考えるのであれば、断熱材に限らず、カーテンや家具・クロスなど、トータルで検討すべきです。

また、何より、火災を起こさないための予防を新築の段階からしっかりと考えておくべきだと思います。

 

オススメの断熱材をまとめたページもあります。

3.住宅火災で予防しておくべきこと3選

本章では住宅火災を予防する上で、これだけは絶対に押さえておくべき! ということを3つに絞って解説していきます。

まず、下記グラフの住宅火災の原因(平成27年調査)をご覧ください。出火原因

  • 1位:コンロ 19%
  • 2位:たばこ 12.5%

という調査結果になっています。

この2つだけで全体の30%以上を占めていることになりますので、コンロとタバコは対策しておくべきでしょう。

 

3-1.コンロ

住宅火災の原因1位のコンロはもちろんガスコンロのことを指します。

平成27年の段階でIHコンロが普及しているにも関わらず、火災原因全体の19%を占めているというのは、ガスコンロは非常に高い火災リスクになっていると考えられます。

住宅火災予防、という観点から考えると、新築ではオール電化・IHクッキングヒーターにすることが理想と言えます。

もちろん、オール電化やIHにはデメリットもありますが、火災のリスクを考えるとガスコンロは止めておくべきでしょう。

オール電化のメリット・デメリットをまとめたページもあります。

 

3-2.タバコ

住宅火災原因の第2がタバコで12.5%。こちらも喫煙者が減ってきている平成27年の段階でも第2ということはリスクが高いと言えます。

特に寝タバコの割合が非常に高いデータになっているようです。

やはり火災予防という観点からもアイコスなどの電子タバコに切り替えておくべきでしょう。

 注意
電子タバコが安全になったからと寝タバコをする人が増えているようですが、熱を発するため100%安全とは言えません。電子タバコでも寝タバコは絶対にやめましょう。

 

3-3.火災警報器

前章で記載した通り、近年の住宅火災で危険なのは「煙」です。

住宅火災から命を守るためには、睡眠中も含めて早期に火災に気づき、煙を吸わないことが最優先です。

そのためには火災警報器が正常に作動するかどうかが命運を分けます。

火災警報器は10年で電池交換が必要ですが、実際に動くかどうかの点検が何より重要です。

どのタイプもボタンを押せば音声テストができますので、半年に1度は点検し、正常に動くかを確かめておきましょう。

 

4.まとめ

断熱材が燃えやすいかどうか、素材別に比較することに意味がないことがお分かり頂けましたか?

燃えない断熱材を選ぶことよりも、重要なことは火災を起こさないように予防することです。

また、断熱材の断熱性能・気密性能は、省エネだけでなく、家族の健康にも大きな影響があるものです。

燃えやすいという情報に振り回されず、なるべく性能の高い断熱材を選ぶようにしましょう。

 

最後までご愛読頂きまして誠にありがとうございます。

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