
「上棟式をしない人が増えてきていると聞いたけど、しないと何か問題あるの?」
「もしも上棟式をしなかった場合、ご祝儀やお弁当、お菓子などを差し入れした方がいいの?」
そんな疑問にお答えします。
本記事の内容はこんな感じです。
- 上棟式の意味や、木造や鉄骨などの構造や工法によっての違いが分かる
- 上棟式をやっている方の割合が分かる(元住宅営業マンの経験から)
- 上棟式をする、しない、とは別に、ご祝儀や差し入れをどうすべきか分かる
- 簡易な上棟式、略式のことが分かる
では早速、「上棟(じょうとう)」の意味から解説していきます。
fa-arrow-circle-right地鎮祭のことも知りたい方はこちらをご参照下さい。
目次
1.そもそも「上棟」って何?
最初に「上棟」ってどんなことをやるのかを解説していきます。
まず、上棟は基本的には木造住宅で、かつその構造は「軸組工法(または在来工法)」の場合のみ、上棟があります。つまり鉄骨構造では上棟はありません。
木造軸組工法(在来工法)とは:
昔ながらの日本の住宅工法で、木の柱や梁(はり)などで構造の骨組みを作る工法です。比較的間取りの自由度が高くなり、リフォームにも向いている工法です
基礎工事が終わった後、軸組み工法の場合はたった1~2日で、柱や梁(はり)を組み、屋根まで掛けてしまいます。
これを上棟と言い、柱や梁を組み上げる日を上棟日といいます。
延床面積が40坪以下の住宅なら、大体半日で上棟は完了します。
上棟日だけ、大工を10名前後呼び一気に柱・梁・屋根を組み上げます。ですので、かなり見応えもありますし、感動的な日にもなります。
※上棟は棟上げ(むねあげ)、建前(たてまえ)と呼ばれることもあります。
1-2.鉄骨工法や木造2×4(ツーバイフォー)工法でも上棟はある?
木造軸組み工法以外の、木造2×4(ツーバイフォー)工法や鉄骨工法には、厳密に言うと上棟というものはありません。
しかし、上棟式をやりたいお施主さんが多かったのか、木造2×4(ツーバイフォー)工法や鉄骨工法の場合は、基本的な骨組みが完成したら、形式的に「上棟」としてしまいます。
ただ、1日で骨組みが完成してしまう軸組み工法と違い、木造2×4工法や鉄骨工法は時間を掛けて骨組みを作っていきます。
(当然、一気に人を集めてやることはありません。鉄骨構造なら重機も使いますし)
ですので、上棟式を実施するタイミングとしては、軸組み工法よりもずっと後にやる形になります。
上棟式のやり方は変わりません。
fa-arrow-circle-right木造と鉄骨構造の違いに関してご興味ある方は下記ページをご参照下さい。
2.上棟式の意味や、どんなことをやるのか
では次の「上棟式」の意味合いや内容を解説します。
上棟式は「儀式」というよりも、施主が工事関係者、特に大工などの職人をもてなす「お祝い」「お祭り」です。
地域によっては(昔は特に)近隣の方も招き、お餅やお菓子などを配り感謝を伝えていた。
また、お施主様と工事関係者全員が集まるので、工事の安全・無事を願い、みんなで一緒に家をつくり上げていく約束をする場でもある。
つまり、上棟式とは、施主が職人などを「接待」するお祝いの儀式、ということです。
上棟式はお酒などでお清めをしますが、地鎮祭のように神社の神主さんを呼んでお祓いすることは基本ありません。
(地域によっては神主を呼ぶこともあるそうです)
一般的な上棟式でやることは次のことです。
- 建物の四方に酒・塩・米をまいてお清めをする
- 工事関係に飲み物や料理などを振舞う(宴会)
- 施主の挨拶や工事関係者の紹介
- 施主から職人へご祝儀配布
- 地域によっては餅やお菓子などをばら撒く
そんな上棟式ですが、やはり費用面で大変なので、実施する方はとても減ってきています。
2-1.上棟式で準備するもの
- 塩
- お神酒(1升一本)
- お米(洗米)
- 料理や飲み物
- ご祝儀(職人1人当たり5000円~2万円程度)
- 地域によっては餅やお菓子
場合によっては棟札(むなふだ)・御幣(ごへい)を用意する場合もありますが、事例としては少ないでしょう。
3.ハウスメーカーや工務店に上棟式をした方が良いか確認するのは意味がない?
ハウスメーカーや工務店の担当営業マンに、「上棟式をやった方良いのか」「職人さんにご祝儀を渡した方が良いのか」を確認することがあると思います。
私も現役時代に何度も聞かれた覚えがあります。
大体の営業マンが
「上棟式はやらない人も多いですし、やらなくては大丈夫ですよ」
「ご祝儀? いえいえ、お気持ちだけで結構ですよ」
「職人さんにはお茶くらいご用意頂くだけで大丈夫ですよ」
と返答することが多いのではないでしょうか(おそらくですが)。
実はこれ、遠慮しているだけと思われるかもしれませんが、遠慮しているわけでは全くありません。
まず、上記解説しましたが、上棟式はあくまでもお施主様が職人を接待するわけです。
意味合いから考えると、お施主様が住宅営業マンに「上棟式をやった方が良いか」「ご祝儀を上げた方が良いか」を確認するのは少し変ですね。
お施主様が施工会社に対して「私たちは、あなたの会社、職人さんたちを接待はしなくても大丈夫ですか?」と聞いている意味になってしまいます。
そういう意味では、住宅営業マンは「いえいえ、接待なんてしなくても大丈夫ですよ」と答えるしかないわけですね。
住宅営業マンが「ぜひ接待して下さい」とか「では、ご祝儀で〇〇円ご用意ください」というのは、マナーとしてもおかしいですし、そもそもそんなこと言う権利も資格も無いわけです。
4.上棟式をする、しない、関係なくご祝儀は用意すべき?
近年、金銭のやり取りに関してはどの建築会社もシビアになってきています。ですので、基本、ご祝儀は断るように言われているケースが多いです。
引越し業者さんにご祝儀を渡さなくなってきたことと全く一緒ですね。
上棟式をする、しない、関係なく、ご祝儀は用意する必要はありません。
(もちろん、気持ちの問題ですので、用意しても問題ありません)
また、大工さんなどの職人さんも、近年はご祝儀を受け取る機会も減ってきました。決してご祝儀が無いことでやる気が無くなるなんてことはありませんのでご安心下さい。
※そもそも、やる気とは関係なく、しっかりとした家が建つように建築会社の監督がしっかり管理しています。
全くの余談ですが、2019年現在、職人は人手不足です。職人になる若者も減ってきているから、今後さらに人手が足りなくなるでしょう。
職人の気持ちとしては、お金よりも休みが欲しい、というのがきっと本音だと思います。
ですので、私の考えではありますが、なおさらご祝儀は必要ないのではないでしょうか。
fa-arrow-circle-rightご祝儀を用意した場合のメリットやご祝儀袋の書き方・渡すタイミングなども解説しています。
5.上棟式を実施している人の割合は?
最近は上棟式を実施する人は減ってきた、と良く聞くと思いますが、実際の割合はどれくらいなのでしょうか?
アンケートの集計データなどは無いので、私の経験上から算出した割合になります。
もちろん私個人だけでなく、関わった監督や大工、他の営業マンからの情報もありますので、精度は高いはずです。
2016年~2017年にちゃんとした上棟式をやった方の割合は、おおよそ5%ほどと思います。
下記解説しますが、簡易な上棟式(略式)を含めると、おそらく10~20%くらいと思います。
つまり、80~90%の方は上棟式をやらないわけですね。
5-1.上棟式をしなくても問題ない?ご祝儀や差し入れは?
実施している方の割合から見ても分かると通り、結論から言えば「上棟式をする必要は全くありません」。
極論を言えば、上棟式も職人さんへのご祝儀や差し入れなども全く必要はありません。
もちろん、デメリットもありません。
職人さんはプロですし、ご祝儀や差し入れなど無くても、そもそもきっちりと図面通りにやってくれます。現場監督もしっかり確認していますしね。
ただ、上棟時に限らず、お茶など差し入れをして上げると、職人さんとコミュニケーションが生まれて、例えば間取りに関しての簡単なアドバイス(この間取りならこんな備品買っとくといいよ、とか、ここは傷みやすいから〇〇しておくと良い、など)をもらえるメリットなどはあると思います。
6.お弁当やお菓子など、上棟式に何か準備したい時はどうすれば?
上棟日に限らず、大工さんに差し入れをして上げたい場合を解説します。
まず、お弁当はやめましょう。
職人さんは現地で昼食をとる場合、外食がしにくいです(服も汚れているし)。
結果として現地にお弁当を持参することがほとんどになります。つまり、お弁当を頂くのは困ってしまうわけです。
どうしても、という場合は、監督に予め〇月〇日の何時にお弁当を用意する旨を伝えておきましょう。
ただ、お茶やお菓子はやっぱり喜んでくれます。特に夏場や冬場はきつい力仕事ですので、冷たい(暖かい)飲み物は最高でしょう。
上棟日に差し入れする場合は、予め数日前には監督に集まる人数を確認しておけば良いでしょう。
大体14~15時くらいは骨組みが完成に近づいていますし、おやつタイムということもあってベストだと思います。
差し入れと一緒にお茶なども一緒にネットで買えば楽ですね。
2,000円前後で十分ではないでしょうか。
※Amazonや楽天で「差し入れ」で検索すれば出てきます。
7.上棟式は「略式」、簡易な上棟式も全然OK!
上棟式はやる必要は全くありませんが、逆にやりたい方もいらっしゃると思います。
ただ、料理を振舞ったり、ご祝儀を渡すのは費用面からキツイ、というケースも多いでしょう。
その場合は、簡易な上棟式(略式)を行うのが良いと思います。
最近は簡易な上棟式をやる方が増えてきました(主流になっているくらいです)。
簡易な上棟式にやることは以下の通りです。
- 建物の四方に酒・塩・米をまいてお清めをする
- 施主の挨拶
- お菓子やお茶などの差し入れ
料理やご祝儀が割愛されて簡略化されています。差し入れも簡単なもので大丈夫です。
簡易な上棟式をやる際は、担当の住宅営業マンにその旨を話せば、現場監督などに話してくれるはずですので、時間帯など打ち合わせをしておきましょう。
また、鉄骨構造や木造2×4(ツーバイフォー)工法でも、この簡易な上棟式をやるケースも多々あります。
8.上棟はぜひ見学しよう!(木造軸組工法だけですが)
木造軸組み工法の上棟は、仮に全く「上棟式」をやらなかったとしても、ぜひ見学をお勧めします。
持ち物としては、コンビニでお茶を10本前後購入するだけで問題ありません。
上棟は住宅営業マンも感慨深いですので、お施主様としてはもっと感慨深いと思います。
それに、ずっと平面の図面でイメージしてきたものが(3D画像は見たかもしれませんが)、はっきりと立体的に分かる最初の日でもあります。
イメージでしかなかった大きさなどもはっきりと分かりますし、柱の位置をみれば間取りも確認できると思います。
ぜひ写真もたくさん撮っておきましょう。
fa-arrow-circle-right上棟式の後は、「施主検査」や「引渡し」、という大事な行事が控えていますので、そちらも早めに情報収集して下さいね。
9.まとめ
上棟式の意味や内容、それに上棟式はやる必要がないことがお分かりになりましたか?
ご祝儀や差し入れも、負担が大きいと感じる場合は、まったく必要ありません。
とはいえ、日本古来からある上棟式、文化として捉えると素敵なものには変わりません。
費用の負担が少ない簡易な上棟式なら、余裕があればやってみても良いのではないでしょうか?
最後までご愛読頂きましてありがとうございます。