
「別々のハウスメーカーから、全館空調と全館床暖房を提案されているんだけど、どっちがいいの?
冬は床暖房の方が気持ちよさそうだけど、夏は全館空調の方が快適だと思うし。。」
「全館空調に床暖房を併用するのは勿体ないのかな?」
本記事の内容はこちらです。
- 全館空調と全館床暖房を7つの視点から比較してみました(結論あり)
- 近年の全館空調と床暖房は併用する必要はないことが分かる
では早速解説していきます。
目次
1.全館空調に床暖房の併用は必要あるの?
最初に、全館空調と床暖房の併用が必要あるか、を解説していきます。
最初に結論からお伝えてしていきましょう。
また、これは北海道・東北など、寒い地域でも全く同じことが言えます。
理由は2つあります。
- ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を主体に、高断熱・高気密化が進んでいるから
- 全館空調そのものが進化しているから
本章では詳しく解説しませんが、ZEHについて、及び全館空調の進化については下記ページにまとめていますのでご参照下さい。
また、2020年には省エネ法の義務化もあります。
2020年には、一定の高断熱・高気密の基準をクリアする住宅にしなければいけない、という法律が義務化されます。
fa-arrow-circle-right2020年の省エネ法義務化についてまとめたページです。
上記理由から住宅の高断熱・高気密化が進み、また、全館空調もかなり進化してきました。
一昔前と比較すると、夏も冬も全部屋一定の温度を保つ力が格段にアップしています。
ですので全館空調と床暖房と併用する必要は全くありません。
現状かなり少なくなってきていますが、ローコストメーカーなどで断熱・気密性能が低い場合は、全館空調にすると電気代がかなり増加してしまうので、併用どころか全館空調そのものを止めた方がよいでしょう。
2.全館床暖房のメリット・デメリット
続いて、全館床暖房のメリット・デメリットを簡単に解説していきます。
fa-arrow-circle-rightなお、最新の全館空調のメリット・デメリットは下記ページにまとめています。
まず、最近の全館床暖房は「ヒートポン式温水床暖房」が主流となっています。
大気熱を利用したヒートポンプ(電気)で水を温め、それを床下に流す仕組みになっていて、昔からある一般的な床暖房よりも電気代がかなり安くなります。
(ガスや灯油タイプもありますが、最近はヒートポンプ式の電気が主流です)
最新の全館床暖房のメリットをまとめると次のようになります。
- エアコン使用時とほぼ変わらない電気代で、全部屋一定の温度を保てる
- 床が温まるふく射熱でじんわり温まるので心地いい
- ヒーターなどの異なり、空気が綺麗なまま
続いて、デメリットは以下の形になります。
- 導入費がエアコンなどの比べると高くなる
- メンテナンスや修理費用が高い
- 乾燥しやすい
上記が主なデメリットです。
特にエアコンやヒーターなどの暖房機器と比較すると、コスト面が一番のデメリットでしょう。
乾燥しやすいというデメリットも一般的に言われることがありますが、高断熱・高気密の住宅は基本、乾燥しやすいので、床暖房のせい、というわけではありません。
3.全館空調と全館床暖房を7点で比較してみた
本章では、本記事の本題となる「全館空調」と「全館床暖房」を次の7点で比較してみます。
- 光熱費(ランニングコスト)
- 快適さ
- お手入れ、メンテナンス性
- 耐久性・寿命
- 維持費・修理費
- 導入コスト(初期費用)
- 意匠性(必要スペース)
■比較する上での前提
なお、全館空調と全館床暖房を比較する上での前提として、どちらも2018年10月現在、ここ数年以内に登場している設備を比較対象とします。
また、全館床暖房はヒートポンプ式床暖房とします。
3-1.光熱費(ランニングコスト)を比較
光熱費を比較する上では、住宅の大きさ、断熱・気密性能を同じ条件とする必要がありますが、同じ条件で比較しているデータは存在しません。
ですので、予測値になります。
まず、床暖房では高断熱・高気密業界NO1の「一条工務店」の全館床暖房を参照しました。
参照サイトは「生活の参考書:一条工務店の床暖房だけの電気代を算出したら9千円!この高さデメリットですか!?」です。
ここでは12月~4月までの床暖房のみの電気代が9千円/月となっています。
続いて全館空調は「セキスイハイム」の快適エアリーを参照しました。
参照サイトは「書斎のある☆おうち:セキスイハイム快適エアリーつけた感想☆快適エアリーとは?その電気消費量☆」です。
こちらの電気代を計算すると12月~4月の全ての電気代が12,700円/月となり、おそらく全館空調だけの電気代は6~7千円と予想がつきます。
夏は床暖房を使えないので、家中のエアコンをつけっ放しの形にしないと全館空調と比較することができません。
その形で比較した場合、全館空調の方が電気代は安くなります。
もちろん、様々な全館空調や全館床暖房がありますが、全く同じ条件下で勝負した場合、結論は次の通りです。
高断熱・高気密ではない時代には全館空調の電気代は非常に高いイメージがあったと思いますが、近年の高断熱・高気密住宅で最新の設備で勝負すると全館空調の方が電気代は安くなります。
3-2.快適さはどちらが上?
続いて、全館空調と全館床暖房を「快適さ」から比較します。
まず、冬の快適さ、特に「気持ち良さ」は床暖房の方が勝ると思います。
床暖房は2章でも解説した通り「ふく射熱」を利用しているので、オイルヒーターのようにやわらかい熱となるため、心地良さは上回るでしょう。
また、全館空調と比較しても空気も綺麗な状態が維持できるのが床暖房の特徴です。
しかし、夏は全館空調に軍配が上がります。
住宅において快適さに必要なのは湿度になります。
快適な湿度は40~50%と言われますが、夏や梅雨時期はそれ以上の湿度になります。
全館空調は全部屋の湿度を飛ばす働きもあるので、夏は快適になります。
3-3.お手入れ・メンテナンス性で比較
続いて、全館空調と全館床暖房のお手入れ・メンテナンスの大変さを比較します。
全館空調のお手入れ・メンテナンスが必要なのは以下の部分です。
- 月1~2のフィルター清掃
- 2~3年に1度の業者メンテナンス
- 10年前後に1度のダクト清掃
続いて、全館床暖房のお手入れ、メンテナンスは以下の通りです。
- 10年前後に1度の不凍液(温水)の交換
※地域やメーカーによっては不凍液を使用せず、ただの水の場合もあります。
上記比較すれば、結論は一目瞭然ですね。
温水式の床暖房は故障したり、10年後の不凍液の交換までは何もしなくても良い、というのは大きな利点です。
全館空調は、まあエアコンと同じようにフィルター清掃がありますが、何より数年に1度業者メンテナンスがあり、若干ですがめんどうと言えます。
全館空調によっては数年に一度の定期メンテナンスが不要の場合もあります
3-4.寿命、耐久性が上なのはどっち?
全館空調と全館床暖房を寿命と耐久性で比較してみます。
まず、全館空調の基本の本体構造はエアコンと変わりません。
ですので、業務用~家庭用のエアコンと寿命や耐久性は大きく差はありません。
つまり、10~15年で本体交換の必要が出てくるでしょう。
参照サイト:空デポ⇒業務用エアコンの耐用年数と寿命
続いて全館床暖房の寿命は、液体の配管の寿命と同じと言われています。
配管は当然長持ちする素材が疲れており、30年以上は長持ちする可能性が高いと言えます。
3-5.将来の維持費・修理費で比較
続いて、発生する維持費・修理費で比較しました。
まず全館空調の維持費、修理費は次のようになります。
- 2~3年に1回の定期メンテナンス3~5万円
- フィルター交換費10年前後で1~3万円
- 10年に1度のダクト清掃3~5万円
- 10~15年に1度の本体交換費用40~80万円
- 故障時の修理費3~10万円
※各メーカーによって異なります。
続いて、全館床暖房の維持費、修理は以下の通りです。
- 10年に1度の不凍液交換費用3~7万円
- 故障時の費用30~100万円
※各メーカーによって異なります。
一見、全館空調の方が費用は掛かるように見えますが、全館床暖房はその構造上、修理費が大きくなる傾向にあります。
また、全館床暖房はエアコンも別に設置しないといけないので、エアコンのメンテナンス費用も考慮する必要もあるでしょう。
ですので、この項目には関しては比較が難しく、結論は以下の通りになります。
3-6.導入コストはどちらが上か?
全館空調と全館床暖房の設置・導入費用を比較します。
住宅メーカーによって異なりますが、全館空調の導入費用は大体100~250万円前後となります。
一昔前まで全館空調の導入費は200~300万円が当たり前でしたが、年々導入費は下がってきています
全館床暖房の設置・導入費用は算出が難しい事情があります。
それは、全館床暖房をウリにしているメーカー(一条工務店、ユニバーサルホーム)は、全館床暖房を標準仕様としており、オプションにはしていないため金額を算出することは難しいのです。
fa-arrow-circle-right標準仕様とオプションに関しては下記ページにまとめています。
全館ではなくオプションとしての床暖房は、一般的に1坪5~10万円程度になります。
ですので、35坪の家で全館床暖房を導入したとすると、おおよそ150万円~200万円ほどになると想定できます。
単純に設置費用だけ見ますと、各ハウスメーカーによって異なるものの、平均値は同じくらいに見えます。
ただし、全館空調はエアコンを一切設置しなくてもよいですが、全館床暖房はエアコンが必須になります(戸建ての場合は最低でも2~3台、30~50万円以上のエアコン費用が必要)。
ですので、結論は以下の通りとなります。
3-7.場所・スペースが必要なのは?(意匠性で比較)
最後に、全館空調と全館床暖房、場所を取るのはどちらかを比較します。
全館空調のスペースが必要になる部分は以下の通りです。
- 全館空調本体
- ダクトスペース
- 室外機
メーカーによっては本体が床下や天井裏に格納されるケースもある
続いて、全館床暖房のスペースが必要になる部分は以下の通りです。
ただし、床暖房の場合はエアコンも数台分スペースが必要になります。
- 全館床暖房本体
- エアコン数台
- 室外機数台
全館床暖房のスペースはあまり取られませんが、結局エアコン本体と室外機で場所が取られてしまいます。
ですので、結論は以下の通りです。
4.結論:今後は全館空調が普及する
本記事3章にて、全館空調と全館床暖房を7点で比較しましたが、結論は次の通りです。
全館床暖房が勝っているのは、冬の快適さ(夏は全館空調が上)とお手入れが少ない部分のみと言えます。
全館空調が進化する前は、全館床暖房や、リビングなどの一部分の床暖房が住宅業界で流行っていました。
しかし、現在は住宅の高断熱・高気密化と共に全館空調が急激な進化を遂げています。
おそらく、2019年以降も全館空調はさらに進化し、普及してくることは間違いないでしょう。
戸建てやマンションでも、全館空調が当たり前の時代もかなり近い未来に来ると思われます。
最後までご愛読頂きまして有難うございました。