「全館空調と床暖房、どっちがいいの?」
「全館空調に床暖房を併用するのはどうなの?」
冬の寒い季節に床暖房の快適さを知っていると、新築なら絶対ほしくなってしまいますよね。
ですが、近年、大手ハウスメーカーがこぞって省エネルギーな「全館空調」を発売しています。
一体どっちがいいのでしょうか。
本記事ではそれぞれの特徴を比較し解説していきます。
目次
1.全館空調に床暖房の併用は必要あるの?
現在お住いの家がとっても寒いと、全館空調と床暖房、どっちも併用したいと考える方もいらっしゃいますよね。
実際に私はリフォームの現場で併用している方とお話したこともあります。
最初に結論からお伝えすると、
これは北海道・東北など、寒い地域でも全く同じことが言えます。
実際に併用している方も「冬は床暖房しか使ってないんです」と言われていました。
併用が必要ない理由は2つあります。
- ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を主体に、高断熱・高気密化が進んでいるから
- 全館空調そのものが進化しているから
本章では詳しく解説しませんが、ZEH、および全館空調の進化については下記ページにまとめていますのでご参照下さい。
現在、住宅の高断熱・高気密化が進み、また、全館空調もかなり進化してきました。
昔と比較すると、室内を一定の温度に保つ力が格段にアップしています。
全館空調と床暖房と併用するのはオーバースペックですし、導入費用も電気代も無駄となってしまいます。
「全館空調」か「床暖房+一般的なエアコン」どちらか選べば問題ありません。
2.床暖房の種類、メリット・デメリット
続いて、床暖房の種類やメリット・デメリットを簡単に解説していきます。
fa-caret-square-o-right全館空調のメリット・デメリットは下記ページにまとめています。
2-1.床暖房の種類
床暖房の種類は大きく分けると「電気式」と「温水式」の2つに分類できます。
電気式は名前の通り、電気で熱を発生させて床を温めます。
温水式はガス給湯器やエコキュートなどの熱源などで温かい水を作り、それを床に流す形になっています。
温水式の方が導入費は高くなる傾向にありますが、光熱費は抑えられます。
そのため、新築で広範囲に床暖房を設置する場合は温水式を採用しているハウスメーカーが多いです。
リフォームで、キッチンのみ、洗面所のみ、など一部分に床暖房を設置する場合は電気式が多いです。
また、それぞれの床暖房を細分化すると、次のように6つに分けられます。
- 電熱線式(電気)
- 蓄熱式(電気)
- PTCヒーター式(電気)
- ガス式(温水)
- ヒートポンプ式(温水)
- 灯油式(温水)
ハウスメーカーの多くは、上記の中で「ガス式、ヒートポン式温水床暖房」を採用しています(電気式も導入できるメーカーがほとんどです)。
蓄熱式をウリにしているハウスメーカーもあります。
2-2.床暖房のメリット・デメリット
床暖房の一般的なメリット、デメリット(一般的なエアコンなどと比較したもの)を簡単にまとめました。
主に、ガス式、ヒートポン式の「温水床暖房」を指します。
- 電気代が抑えられる
加熱範囲を同じとすると、エアコン使用時より電気代が安い、またはほぼ変わらない - 足元からじんわり温まり心地よい
床からのふく射熱でエアコン熱より心地いいと感じやすい - 空気がきれいなまま
エアコン、ヒーターなどの温風と異なり、空気が汚れない
電気式の場合、電気代がやや高くなる傾向にありますが、心地よさや空気が汚れないのは温水式と同じです。
- 導入費が高い
エアコンと比べるとかなり高くなる - メンテナンスや修理費用が高い
フローリングの貼り替えも高額になる傾向にある - 乾燥しやすい
エアコン、ヒーターなどの温風と比較すると乾燥しにくい
特にエアコン・ヒーターなどの暖房機器と比較すると、コスト面が一番のデメリットでしょう。
3.全館空調と全館床暖房を8点で比較してみた
本記事の本題となる「全館空調」と「全館床暖房」を次の8点で比較してみます。
- 光熱費(ランニングコスト)
- 快適さ
- お手入れ、メンテナンス性
- 加熱スピード
- 耐久性・寿命
- 維持費・修理費
- 導入コスト(初期費用)
- 意匠性(必要スペース)
■比較する上での前提
なるべく正確に比較するため、加熱範囲を「全館空調」と「全館床暖房」という形で家全体とします。
また、全館床暖房は「ガス式・ヒートポンプ式床暖房」を基準としています。
3-1.光熱費(ランニングコスト)を比較
光熱費を比較する上では、住宅の大きさ、断熱・気密性能を同じ条件とする必要がありますが、同じ条件で比較しているデータは存在しません。
ですので、予測値になります。
まず、床暖房では高断熱・高気密業界NO1の「一条工務店」の全館床暖房を参照しました。
参照サイトは「生活の参考書:一条工務店の床暖房だけの電気代を算出したら9千円!この高さデメリットですか!?」です。
ここでは全館床暖房のみの電気代が9千円/月(12~4月)となっています。
ちなみに、床暖房の電気代は次のようなものに影響を受けます。
- 熱源(各メーカー専用の室外機や給湯器)の性能
- 設置範囲(建物の広さ)
- 温度設定
続いて全館空調は下記ページのものを参照しました(どのメーカーのものかは見つけられませんでした)。
参照サイトは「さとるパパの住宅論:全館空調の住宅の月別電気代を公開します【2019年】です。
こちらの電気代を計算すると全館空調のみの電気代(試算)が約5,000/月(12月~3月)となっています。
ちなみに、全館空調の電気代は次のようなものに影響を受けます。
- 熱源(各メーカー専用の空調設備)の性能
- 設置範囲(建物の広さ)
- 温度設定
- 外気温
- 建物の断熱・気密性能
上記のように全館空調や全館床暖房の電気代を比較すると、結論は次の通りと言えます。
- 全館空調の方が電気代は安くなりやすい
- 全館空調の方が、外気温、建物の性能(断熱・気密)などの影響を受けやすい
近年の住宅は、高断熱・高気密化がかなりの速度で進んでいます。
どちらも電気代が下がっていくのは間違いありませんが、全館空調の方が電気代がさらに安くなる可能性が高いと思います。
高断熱・高気密ではない住宅の場合、全館空調の電気代は大きく上がってしまう可能性があります。
3-2.快適さはどちらが上?
続いて、全館空調と床暖房の「快適さ」を比較します。
まず、冬の快適さ、特に「気持ち良さ」は床暖房の方が勝ると思います。
床暖房は2-2章でも解説した通り、「ふく射熱」を利用していてオイルヒーターのようなやわらかい熱となるからです。
また、全館空調と比較しても空気も綺麗な状態が維持できるのが床暖房の特徴です。
しかし、夏は全館空調に軍配が上がります。
住宅において快適さに必要なのは湿度になります。
快適な湿度は40~50%と言われますが、夏や梅雨時期はそれ以上の湿度になります。
全館空調は全部屋の湿度を飛ばす働きもあるので、夏は快適になります。
ただ、ハウスメーカーによって全館空調に、湿度を調整する「調湿機能」や空気をキレイにする「空気清浄機能」がついている場合があり、快適さがアップしてきています。
3-3.お手入れ・メンテナンス性で比較
続いて、全館空調と床暖房のお手入れ・メンテナンスを比較します。
各メーカーによって異なりますが、「全館空調」のお手入れ・メンテナンスが必要なのは以下の通りです。
- 月1~2回のフィルター清掃
- 2~3年に1度の業者メンテナンス
- 10年前後に1度のダクト清掃
続いて、「床暖房(温水式)」のお手入れ、メンテナンスは以下の通りです。
- 10年前後に1度の不凍液(温水)の交換
※地域やメーカーによっては不凍液を使用せず、ただの水の場合もあります。
上記比較すれば、結論は一目瞭然ですね。
温水式の床暖房は故障したり、10年後の不凍液の交換までは何もしなくても良い、というのは大きな利点です。
全館空調はエアコンと同じようにフィルター清掃がある上、何より数年に1度業者メンテナンスがあるなど、ややめんどうと言えます。
全館空調によっては数年に一度の定期メンテナンスが不要の場合もあります
3-4.寿命、耐久性が上なのはどっち?
全館空調と床暖房を寿命と耐久性で比較してみます。
まず、全館空調の基本の本体構造はエアコンと変わりません。
ですので、業務用~家庭用のエアコンと寿命や耐久性は大きく差はありません。
つまり、15年前後で本体交換の必要があります。
参照:空デポ⇒業務用エアコンの耐用年数と寿命
続いて床暖房の寿命は、熱源(室外機や給湯器など)が一般的な給湯器と同じで15年前後です。
全館空調と同じですね。
・電気式床暖房は熱源が電気のため、寿命はほぼありません。
・液体の配管は30年以上長持ちすると言われています。
つまり、結論としては次のようになります。
3-5.将来の維持費・修理費で比較
続いて、発生する維持費・修理費で比較します。
まず全館空調の維持費、修理費は次のようになります。
- 2~3年に1回の定期メンテナンス:3~5万円
- フィルター交換費10年前後:1~3万円
- 10年に1度のダクト清掃:3~5万円
- 15年に1度の本体交換:40~80万円
- 故障時の修理:3~10万円
※各メーカーによって異なります。
続いて、床暖房(温水式)の維持費、修理費は以下の通りです。
- 10年に1度の不凍液交換:3~7万円
- 熱源故障時の修理:3~10万円
- 15年に1度の熱源交換:60~100万円
※各メーカーによって異なります。
結論は以下の通りになります。
3-6.導入コストはどちらが安い?
全館空調と全館床暖房の設置・導入費用を比較します。
ハウスメーカーによって、また建物の大きさによって異なりますが、全館空調の導入費用は大体100~300万円となります。
一昔前まで全館空調の導入費は200~300万円が当たり前でしたが、年々導入費は下がってきています
全館床暖房の設置・導入費用は算出が難しい事情があります。
それは、全館床暖房をウリにしているメーカー(一条工務店、ユニバーサルホーム)は全館床暖房を標準仕様としていて、全館床暖房が本体価格に含まれてしまうため金額を算出することが難しいんです。
fa-caret-square-o-right標準仕様とオプションに関しては下記ページにまとめています。
全館ではなくオプションとしての床暖房は、一般的に1坪5~10万円程度になります。
ですので、35坪の家で全館床暖房を導入したとすると、おおよそ150万円~200万円ほどになると想定できます。
つまり、単純に設置費用だけを比較すると、各ハウスメーカーによって異なるものの、平均値は同じくらいと考えられます。
ただし、全館空調はエアコンを一切設置しなくてもよいですが、床暖房はエアコン設置が必須になります(戸建ての場合は最低でも3~4台、40~60万円以上のエアコン費用がかかる)。
ですので、結論は以下の通りとなります。
3-7.場所・スペースが必要なのは?(意匠性で比較)
最後に、全館空調と床暖房、どちらが場所(スペース)を取ってしまうのかを比較します。
全館空調のスペースが必要になる部分は以下の通りです。
- 室外機ユニット
- 室内機ユニット
- ダクトスペース(吹き出し口を含め)
ハウスメーカーによっては室内機ユニットが床下や天井裏に格納されるケースもあります。
続いて、床暖房のスペースが必要になる部分は以下の通りです。
- 熱源機(室外が多い)
- 配管分岐スペース
- エアコン数台(室外機含め)
全館空調と床暖房とそれぞれ本体や配管に取れれるスペースはあまり変わりませんが、床暖房はエアコン本体と室外機が必要になり、そのスペースが取られてしまいます。
つまり、結論は以下の通りとなります。
3-8.加熱スピードはどちらが早い?
全館空調、床暖房、電源を入れたらどちらが早く温まるのでしょうか?
単純に比較すれば、全館空調は「数時間~半日」、床暖房は「2日前後」となります。
つまり、全館空調の方が早く温まることになります。
しかし、どちらも24時間付けっぱなしにするのが一般的です。
高気密・高断熱の住宅では、どちらもオン・オフを繰り返す方が電気代が上がってしまう傾向にあります。
つまり、結論は以下の通りです。
4.まとめ:今後は全館空調が普及する
全館空調と床暖房を8点で比較しましたが、いかがでしょうか?
それぞれのメリット・デメリットを比較して選んで頂ければよいと思います。
住宅業界では、全館空調が進化する前は全館床暖房や、リビングなどの一部分の床暖房が流行っていました。
しかし、現在は住宅の高断熱・高気密化と共に全館空調が急激な進化を遂げています。
おそらく、2023年以降も全館空調はさらに進化し、さらに普及するくることは間違いないでしょう。
戸建てやマンションでも、全館空調が当たり前の時代もかなり近い未来に来ると思われます。
最後までご愛読頂きまして有難うございました。