
2020年になったら、ZEHや太陽光パネル設置が義務化されるという話が住宅業界で広まっているようです(2018年8月現在)。
後でご説明がしますが、実際にはZEHや太陽光パネルが義務化されるわけではありません。
正確には、「省エネルギー基準」というものが2020年まで段階的に義務化される、というのが正解です。
今回の記事の内容はこんな疑問にお答えしていきます。
- そもそもその省エネ基準って何なの? 分かりやすく知りたい!
- 2020年にはその省エネ基準をクリアしていない住宅は一気に資産価値が下がるの?
- 2020年までに新築する場合、ハウスメーカー選びなどで省エネ基準とか気にした方がいいの?
- 今の建築会社が作っている家は、どれくらい省エネ基準をクリアしているの?(適合率)
2018年12月現在、国土交通省の発表で、300㎡以下の建物は省エネ基準義務化の対象外になると発表がありました。
目次
1. 2020年までに「省エネ基準」を守った住宅を建てなくてはいけない?
では、そもそも「省エネルギー基準」がどういったものかを分かりやすく解説していきます。
難しい言葉がいっぱいのサイトはたくさんあるので、なるべく簡単にいきます。
2020年までに、大きい建物(延床面積2,000㎡以上)から少しずつ小さい建物(300㎡未満)の順番で「省エネルギー基準」を守った建物(大型施設やビル、戸建て住宅など)を建てなさい、というルールを国が作りました。
下の画像は国が定めた義務化のスケジュール表です。
個人の一般的な戸建てのほとんど(延床面積300㎡以下)は、2020年以降「省エネルギー基準」をクリアした、かなりECOな建物にしなくてはいけません。
ただし、基本的にハウスメーカーや工務店などの建築会社が「省エネ基準」をクリアするように努力するだけですので、新築する施主側から見れば何かやる必要は全くありません。
(唯一やることがあるとすれば、省エネ性能が高くてECOな家でも、建物の金額を高くしないように建築会社に祈るだけです)
※冒頭にも記載しましたが、2018年12月現在、国土交通省の発表で、300㎡以下の建物は省エネ基準義務化の対象外になると発表がありました。
住宅業界に大きなニュース。
2020年省エネ基準への適合が義務化されてましたが300㎡以下の建物は対象外になったそう。適合が難しい建築会社の破綻を危惧したのか、一安心した経営者も多いかもしれません。
でも、少しでも多く低価格な省エネ住宅が普及して欲しいですね。https://t.co/kysgt9Pa5u
— あずた@元住宅営業トップセラー (@todo4x) 2018年12月6日
ただ、省エネ住宅を普及させるために、省エネ基準および手続きの合理化や簡素化は行うとのことです。
つまり基準に適合するための努力基準になります。
一方、建築士には建築主に省エネ基準に適合するかの説明義務を果たさせる制度を創設するとも発表がありました。
1-1.なんで日本で省エネ基準が厳しくなったの?
何故日本で省エネ基準が急に厳しくなったのでしょうか?
実はZEH(ネットゼロエネルギーハウス)も同じ理由で作られました。
詳しくは上記ZEHのページに記載してありますが、答えは簡単で「地球温暖化」防止のためと考えられます。
2015年に世界の主要国で結ばれた「パリ協定」がきっかけとして作られました。
パリ協定は、温暖化防止ために、各国が使うエネルギーを減らすことで二酸化炭素を少なくしましょう、という約束です。
2.そもそも「省エネ基準」ってどんな基準?
では具体的に省エネ基準がどんな基準化を解説していきます。
とても詳しく知りたい方は下記ページが分かりやすくて参考になると思います。
fa-arrow-circle-right一般社会法人「日本サステナブル建築協会」よく分かる住宅の省エネルギー基準
実は省エネルギー基準というのは、平成11年にすでに作られていました。
それが、平成25年に改正したわけです。
改正後の省エネ基準のポイントは以下の2点です。
- 外皮の熱性能基準
- 一次消費エネルギー量の評価基準
これだけだと非常に分かりにくいですよね。ただ、省エネ基準は大きく分けてこの2つだけなんです。
かなり簡単に、少しだけ詳しく解説します。
■外皮の熱性能基準
この基準は単純に「断熱性」「気密性(隙間が無い)」を一定以上にしなさい、というルールです。
ただし、日本の地域によって気温が違うので、8つに地域を分類して、それぞれの基準値をクリアしなくてはいけない、ということです。
外皮というのは、建物の外と接する部分です。屋根、天井、壁、開口部、床、基礎などの外周面を指します。
数字の計算式などは覚える必要がないと思うので割愛しますが、建物から熱が逃げ出す上限値が上記表の数字です(地域5であれば「0.87」)。
2020年以降に新築する建物は、その上限値以下にしなさい、ということですね。
この基準は断熱材や窓ガラス、サッシや玄関などの断熱性能を上げることでクリアしていきます。
もちろん、建物の隙間が少なるなるような(気密性を上げる)施工もしないといけません。
なお、その上限値の下にある「冷房期の平均日射熱取得率」というのは、簡単に言うと「暖かい地域(地域区分5~8)の夏の日光によって建物に入ってくる熱」を上限値より少なくしなさい、というルールです。
この基準は、窓ガラスの性能を上げたり、日光を遮る庇や軒、ブラインドを設置するなどでもクリアすることが出来ます。
■一次消費エネルギー量の評価基準
建物内部で使う一次消費エネルギーを、基準値以下にしなさい、というルールです。
一次消費エネルギーとは⇒
住宅の冷暖房をはじめ、換気、給湯、照明などの設備機器のエネルギーを熱量換算した値のことです。
つまり、それ以外のテレビ・PC・ドライヤー・電子レンジなどの電気代は含みません。
簡単に言えば、
給湯器、エアコン、換気、照明などの設備を高性能・高効率して、電気をあまり使わない家(省エネ性能が高い)にする、
ということです。
太陽光パネルを設置すれば、評価が上がり、クリアしやすくなります。
この基準は、例えばエコキュートなどの高効率の給湯器、LED照明、省エネ性能の高いエアコン、熱交換器が付いた換気設備などを使用することでクリアできます。
fa-arrow-circle-right換気に関しての詳細は下記ページにまとめていますのでぜひご参照下さい。
2-1.省エネ基準を守ればたくさんのメリットがある
上記省エネ基準をクリアすれば、施主にとってもたくさんのメリットがあります。
- 電気代が安くなる
- ヒートショックが起きにくいなど健康に良い
- 税金が安くなるなどの優遇制度が受けられる
ひょっとしたら2020年まで建築会社が住宅性能をあげていくと、建物の金額も高くなっていく可能性はあります。
(別に理由ですが2016~2018年でハウスメーカーは少しずつ値上げしています)
新築時に基準をクリアしても、だんだん断熱・気密性能が下がってきてはメリットが無くなってしまいます。
断熱材選びも重要ですので、注意しましょう。詳しくは下記ページをご参照下さい。
3.ZEH(ゼッチ)や太陽光発電の義務化という、よくある間違い
この省エネ基準の義務化は、ZEHや太陽光パネル搭載の義務化、と間違われることがあります。
2020年までに省エネ基準をクリアすれば問題ないのであって「必ずZEH住宅にしないといけない」「太陽光パネルを載せないといけない」ということはありません。
■ZEH住宅の基準
ZEH住宅は以下の基準、目標が定められています。
- 2020年までに標準的な新築住宅でZEHの実現
- 2030年までに新築住宅の平均でZEH実現
つまり、2020年までに新築の半分以上はZEH住宅にする、というものです。
また、2030年までに新築のほとんどをZEH住宅にする、ということも国が目標として定めました。
ですので、ZEHは厳密には義務化ではありません。
もちろん、ZEH住宅に適合させれば、省エネ基準はクリアしますし、今後どんどん普及していくことは間違いありません。
2020年になる前でもZEHに適合しておけば、初期投資が掛かりますが、メリットは多いです。
もちろん、デメリットもあります。
fa-arrow-circle-rightZEHに関してご興味ある方は以下のページもご覧ください。
■太陽光パネル搭載の基準
上記、省エネ基準の説明でも記載しましたが、太陽光パネルを搭載すれば省エネ基準としては評価が上がり、クリアしやすくなります。
ですので、必ずしも搭載しなくてはいけない、という義務はありません。
ただし、以下の基準、目標はあります。
- 2030年までにホーム エネルギー マネジメント システム(以下、HEMS)を全世帯(5000万世帯)へ普及
2030年までに通称ヘムスと呼ばれるシステムを全世帯へ普及するという目標です。
HEMSとは ⇒ 電気やガスの使用量をリアルタイムにモニターで確認できるように見える化する仕組みです。
住宅のどの場所でどれだけ使用されているかや、太陽光発電量・売電量なども分かります。
fa-arrow-circle-rightHEMSに関しては下記ページに詳しく記載しています。
太陽光発電設備とワンセットで設置されることが多いのがHEMSです。
ただ、2020年や2030年までに必ず太陽光パネルを搭載しなくてはいけない、という義務はありません。
ただし、2030年までにZEHが当たり前になってくると太陽光パネルを搭載することも当たり前になってくるのは確かでしょう。
4.省エネ基準をクリアしていない家でないと、資産価値が大幅に下落?
2020年になる前に建てた、または買った家で、「省エネ基準をクリアしていない住宅は資産価値が下がる可能性がある」と書いているサイトがあります。
また、そう言っている住宅営業マンを私は見たこともあります。
そう言われると、確かに不安になりますよね。
それに、これから新築する場合も、慎重に基準をクリアしているか検討していく必要があるように思えます。
でも果たして、本当にそうなのでしょうか?
ではまず、そもそも住宅の資産価値ってどれくらいのスピードで下がっていくのでしょうか?
次のグラフを見て下さい。
■戸建住宅の築30年間における平均価格の推移
出典:東日本不動産流通機構
上の画像が戸建ての平均価格の推移、下の画像がマンションの平均価格の推移を表しています。
※戸建ての方が土地がある分、マンションよりもゆっくり落ちていきます。
戸建ての住宅は約30年で3800万円から2200万円くらいに落ちていますね。
ですが、これ、2200万円残っている資産価値のほとんどは土地代です。
不動産業界では建物の資産価値は約20年でほぼ「0円」になると言われています。
つまり、土地だけは資産価値を残しつつ、建物だけが急落していくわけです。
省エネ基準がクリアしている、していないに関わらず、そもそも建物の資産価値は急激に落ちるものです。
仮に省エネ基準を満たしていなかったとしても、資産価値が大きく下がると不安になる必要は無いでしょう。
戸建ての場合、土地に関してはしっかりと資産価値が残るわけですから。
省エネ基準を満たしていない住宅は違法建築になるという話もありますが、建築会社側で基本対応するので、施主側に何の責任もありません。これも心配になる必要はありません
冒頭に記載しましたが、300㎡以下の建物は省エネ基準義務化の対象外になると変更がありました。
ですので、2020年以降、住宅資産価値が下がる可能性が減少していますので、やはり心配は不要です
5.省エネ基準をクリアしている建築会社を選びたいけど、どうすれば良いの?
どうせ家を建てるのだったら省エネ基準をクリアしているハウスメーカーや工務店を選びたい、という方がほとんどだと思います。
省エネのメリットも大きいわけですし。
建築会社を選ぶ際に気を付けるポイントを解説していきます。
まず、そもそも、現在の省エネ基準をクリアしている建築会社の割合はどれくらいなのでしょう。
5-1.省エネ基準の適合率
2015年度における戸建て住宅の省エネ基準への適合率は53%です。
出典:日本経済新聞
つまり半分です。
・・・たった半分だと不安になりますよね。
でも安心して下さい。
年間150棟以上の家を建てている建築会社の省エネ基準の適合率は88%です。
つまり、ある程度の規模以上の建築会社なら、省エネ基準をほとんどクリアしていることになります。
おそらく2018年現在は90%を超えているのではないでしょうか?
ただ、年間4棟以下の小規模な建築会社では39%しかクリアされていない、という現実もあります。
特に小型の工務店では住宅の性能を上げることがなかなか出来ないというわけです。
小型の工務店のバックアップは国に頑張ってもらうしかありませんね。
2018年現在に新築を計画している方は、中規模以上の建築会社なら大体省エネ基準をクリアしていると思ってもらって良いでしょう。
特に断熱・気密性をウリにしている建築会社ならまず間違いなく大丈夫です。
しかし、工務店の特に小規模な建築会社の場合は、ひょっとしたら省エネ基準をクリアしていない住宅の可能性もあります。
(あくまで可能性です。工務店も義務化に向けて努力しているはずですので、確率は高くないと思います)
念のため、建築会社を回る際(2020年まで)、住宅営業マンにZEHに対応しているか、省エネ基準はクリアしているかを毎回確認すると良いでしょう
6.まとめ
2020年の省エネ基準の義務化に向けて、各建築会社も動いています。また、少しでも低価格でZEHが実現できるようにも開発を進めているでしょう。
この義務化によって住宅だけでなく、大型施設やビルも含めて性能はますます向上して、より経済的・快適な生活を送れるようになってくると思います。
また、現在省エネ基準をクリアしていない住宅に住んでいたとしても、資産価値が急落してしまうなど、不安を抱える必要はありません。
しかしながら、新築後でも早い段階で断熱・気密性性能を上げるリフォームを行うことで、電気代を安くするだけでなく、健康に良かったり、実は住宅を長持ちさせることにも有効です。
検討してみるのもいいかもしれません。
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最後までご愛読いただきまして有難うございました。